ビレーの tavern に響き渡る笑い声は、ラーンの豪快なものであった。イシェが眉間にしわを寄せているのは、いつもの光景だ。
「本当に大穴が見つかったら、お前が最初に買うものは何だ?」
ラーンは酒をぐいっと飲み干して、イシェに尋ねた。
「そんなもの、考えている余裕はない」
イシェはため息をつきながら、テーブルに広げられた地図を指さした。
「今日はあの遺跡の調査だ。テルヘルから依頼されたように、安全第一で進める必要がある」
「わかってるわかってる」
ラーンは不機嫌そうに言ったが、実はイシェの慎重さを頼りにしている部分もあった。
テルヘルは今日もいつものように、凛とした表情で指示を出した。
「目標地点までには、ヴォルダンの兵士が巡回している可能性が高い。彼らを避けるためには、あの狭い通路を通らなければならない」
地図に指を置くと、イシェは深くうなずいた。
「狭い通路…つまり、追いかけっこになるのか?」
ラーンの顔が曇った。狭い通路での戦闘は避けたいものだ。だが、テルヘルの指示に従うしかない。
「よし、わかった。俺たちが先陣を切って、お前たちを逃がす」
ラーンは立ち上がると、剣を手に取った。イシェは小さく頷き、テルヘルも冷ややかに視線を合わせた。
遺跡の入り口に着くと、予想通りヴォルダンの兵士の姿が見えた。彼らは遺跡の中を警戒しながら巡回していた。
「行くぞ!」
ラーンの一声と共に、3人は走り出した。狭い通路に押し寄せた兵士たちは、慌てて対応しようとしたが、ラーンは剣を振り回し、彼らをなぎ倒していく。イシェとテルヘルは彼らをかわしながら、遺跡の奥へと進んでいく。
しかし、通路は長く、兵士たちの数は多くなっていった。ラーンの動きも次第に鈍くなり、汗を額に浮かべている。
「もう限界だ…」
ラーンは息を切らしながら言った。イシェとテルヘルは振り返り、ラーンの顔を見た。
その時、テルヘルが口を開いた。
「行くぞ、私はお前たちを待っている」
彼女は振り返らずに走り続けると、イシェは迷わずラーンの手を引っ張り、彼女の後を追った。
ラーンは一人残されて、兵士たちに囲まれた。彼はため息をつきながら、剣を構えた。
追いかけっこは続く…