ラーンの粗雑な斧 swingが埃を巻き上げ、崩れた石壁の奥から小石が転がり落ちた。イシェは眉間に皺を寄せながら、ラーンを見下ろした。「また無駄な力加減だ。あの石は動かないぞ。」
ラーンは肩をすくめた。「まあ、運が良ければ宝箱が見つかるかもな」。彼の目は期待に満ちて輝いていた。イシェはため息をついた。いつも通り、ラーンの希望は過剰で、現実的ではない。だが、そんな彼を見ていると、イシェ自身もこの遺跡探検に少しだけワクワクしてしまう。
「よし、次はあの奥の通路だな」。テルヘルが地図を広げ、指を動かした。「迷宮のような構造だ。慎重に進もう」。
彼らは、ビレーからほど近い遺跡へと続く細い道を進んでいった。壁には不思議なシンボルが刻まれており、時折、不気味な音が響いてくる。イシェは背筋に冷たいものを覚えた。この遺跡は他のものとは違う空気を漂わせていた。
通路の奥深くになると、迷路のような複雑な構造になっていた。石畳の床は滑りやすく、壁には苔が生えており、足元を不確かにしていた。ラーンが先頭を切って進もうとするが、テルヘルが彼を引き止めた。「待て、ラーン。ここは慎重に進まなければ」。
彼女は地図を指さしながら説明した。「この通路は複数の分岐点がある。間違えると迷宮から抜け出せなくなる可能性もある」。イシェはテルヘルの冷静な判断に安堵した。ラーンの行動力にはいつも感心していたが、時に彼の衝動的な性格は危険な結果をもたらすこともあった。
彼らは慎重に進むにつれて、遺跡の奥深くへと迷い込んでいった。壁画や彫刻、そして謎めいた装置などが彼らの前に現れ、古代文明の痕跡を垣間見せた。しかし、同時に、不吉な予感も募っていた。
突然、床が崩れ、ラーンは深い穴に落ちてしまった。「ラーン!」イシェとテルヘルが駆け寄ったが、ラーンの姿はすでに闇の中に消えていた。
「ラーン!」イシェの声が響き渡る中、テルヘルは冷静さを失わなかった。「落ち着け、イシェ。彼を助けなければならない」。彼女は地図を広げ、崩れた床の近くに記されていたシンボルを見つけた。「これは…警告だ」。
「警告?何の警告?」イシェは不安で声色が震えていた。テルヘルは深い呼吸をしながら言った。「この遺跡は単なる迷宮ではない。何かが眠っている。そして、それを目覚めさせる危険がある」。