ビレーの賑やかな市場を背に、ラーンはイシェとテルヘルに声をかけた。
「よし、今日はあの遺跡だ！地図によると、奥深くに何かがあるらしいぞ！」
ラーンの興奮した様子とは対照的に、イシェは眉間にしわを寄せていた。「また大穴の話か？ラーン、あの遺跡は危険だって聞いたことがある。罠だらけだってさ」
「大丈夫、大丈夫！俺がしっかり守ってやるから心配するなよ。」ラーンは豪快に笑って言ったが、イシェの視線はテルヘルに向いていた。テルヘルの表情はいつも通り冷静で、読み取ることができなかった。
「準備はいいか？」とテルヘルが尋ねると、ラーンは頷き、イシェはため息をついた。
遺跡への入り口は狭く、暗闇に包まれていた。一歩足を踏み入れると、湿った冷たい風が肌を刺すように感じた。ラーンの持つランプの光が壁に映し出すのは、古びた石畳と奇妙な模様だけだ。
「ここには何かいる気がする…」イシェの呟きが、静寂の中で不気味に響いた。ラーンは剣を構え、警戒しながら進もうとしたが、突然床が崩れ、ラーンは深淵へと落ちていった。
「ラーン！」イシェとテルヘルが駆け寄ると、ラーンの姿が見えないほどの深い穴が開いていた。
「大丈夫か！？ラーーン！」イシェの声だけが、暗い穴底にこだました。
テルヘルは冷静に状況を判断していた。「ロープを出せ。」
イシェは慌ててロープを取り出し、テルヘルが慎重に穴の中に下っていった。
しばらくして、テルヘルがラーンを連れて戻ってきた。ラーンの顔は蒼白で、額には傷があったが、意識はあった。
「大丈夫だ…ただ転んだだけだ。」ラーンの言葉はかすれていた。
イシェは安堵した様子を見せたが、テルヘルは何かを感じ取ったのか、鋭い視線で周囲を警戒していた。
「ここは何かおかしい…早く抜け出した方がいい。」
イシェも同意し、3人は遺跡から引き返そうとした。しかし、出口の石壁が崩れ落ちており、道が完全にふさがっていた。
「まさか…」イシェは絶望的な声で言った。
ラーンは立ち上がり、傷を気にせず、出口に向かって剣を振り下ろした。「諦めるな！絶対にここから出す！」
だが、その瞬間、壁から不気味な光が放たれ、3人は息をのんだ。
迷い込んだ遺跡は、予想以上に危険な場所だった。彼らは、この危機を乗り越えられるのか？そして、それぞれの心に渦巻く「迷い」は、どのように解決していくのだろうか…。