ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑い声を上げている。イシェはいつものように眉間にしわを寄せ、彼の肩を軽く叩く。
「また無駄な金を使ったか?」
「違うだろう!今日は祝杯だぞ、イシェ!あの遺跡で珍しい鉱石を見つけたんだ!」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。確かにそれは価値のあるものだったかもしれない。だが、テルヘルが提示した報酬を考えると、その価値は些細なものに過ぎない。
「あの鉱石を手に入れたのはいいけど、テルヘルに渡す前に半分は俺たちに渡せばよかったのに。」
ラーンの顔色が少し曇る。「イシェ、お前はいつもそんなこと言うよな。でも、あのテルヘルがくれた報酬があれば、俺たちだっていつか大穴を掘り当てられるかもしれないんだぞ!」
イシェはラーンの目をじっと見つめた。「いつまでそんなことを言うつもりだ?あの大穴なんてただの幻想じゃないか?」
「違うって!お前もいつか信じろよ!」
ラーンの言葉に、イシェはさらに深い溜め息をついた。
ビレーの街灯が揺れる中、イシェは自分の未来を思い浮かべた。ラーンと共に遺跡を駆け巡る日々。それは楽しいものでもあったが、どこか虚しさを感じていた。テルヘルもまた、復讐という名の夢を抱いて生きている。そして、自分自身は何のために生きているのか?
イシェは深く考え込むことをやめた。今夜はもう酒を飲むことにしよう。明日になれば、また新たな遺跡に挑むことができるはずだ。 ラーンと共に、いつか大穴を掘り当ててみせる。そう自分に言い聞かせた。