「おい、イシェ!あの石碑の影を見てみろ!」ラーンが興奮気味に叫んだ。イシェは眉間にしわを寄せて石碑の影を覗き込む。そこには奇妙な模様が刻まれていた。
「何か分かるか?」ラーンの期待のこもった視線に、イシェはため息をついた。「何かわかるはずがないよ。ただの抽象的な模様じゃないかな」
「そうじゃなくって…」ラーンは言葉を濁し、テルヘルの方を見た。テルヘルは石碑の影をじっと見つめ、何かを考え込んでいるようだった。「この遺跡は農民が生活していた場所らしい。もしかしたら、この模様は彼らの信仰に関連するものかもしれない」
ラーンの期待とイシェの疑いの視線の中、テルヘルはこう続けた。「もしこれが本当なら、この遺跡には何か貴重な遺物が隠されている可能性がある」
「貴重な遺物か…」ラーンの目は輝き始めた。イシェはため息をついた。「また無駄な期待を抱き始めたのか」
しかし、テルヘルの言葉はイシェの疑いも打ち消すほどのものだった。彼女は農民たちが信仰していた神々と関連する知識を披露し、その模様が持つ意味を解き明かしていく。
「この模様は豊作を願うシンボルで…」テルヘルは石碑に刻まれた模様を指差しながら説明した。「もしこの遺跡の奥深くに聖域があれば、そこに農民たちが大切にしていた遺物があるかもしれない」
イシェはテルヘルの言葉に引き込まれていく。かつて彼女は農民として暮らしていた場所を訪れたことがある。貧しいながらも信仰心に厚い人々たちを思い出すと、どこか胸が締め付けられる思いがした。
「よし、探してみよう!」ラーンの声が響き渡り、イシェの考えは現実に戻ってきた。彼女はテルヘルとラーンに続いて遺跡の奥へと足を踏み入れた。
遺跡の奥深くでは、農民たちの信仰心を映すかのような神秘的な光景が広がっていた。そして、その中心には、忘れられた神々の遺物があった。