ビレーの朝は、いつもよりも早く訪れた。ラーンがイシェを揺り起こすように声をかけても、彼女は眠そうな目をこすりながら、いつものように「もうちょっと…」と呟く。
「今日はテルヘルさんが来る日だぞ?大穴が見つかるかもしれないって話じゃ」
ラーンの言葉にイシェは一瞬だけ目を輝かせたが、すぐに現実に戻ったようにため息をついた。
「大穴なんて見つけるわけないよ。いつも通りの遺跡探検になるわ」
「そうか?」
ラーンは笑いながら、イシェの肩を叩いた。
「でも、テルヘルさんがくれる報酬はいつもより多いって言ってたぞ?それだけで十分じゃないのか?」
イシェは小さく頷いて立ち上がった。太陽がビレーの街に差し込み始め、新しい一日が始まる。今日は軽やかな足取りで遺跡へと向かう三人の影が、山々に囲まれた街を離れていく。
テルヘルは、いつもより早くビレーに到着していた。彼女は、ラーンとイシェがまだ寝ているだろうと予想して、近くのカフェで時間を潰した。熱い紅茶を一口飲み干すたびに、ヴォルダンへの復讐の炎が燃え上がるのを感じた。今日は、その復讐に一歩近づく日になるかもしれない。
ラーンの豪快な笑い声とイシェの静かな足音。テルヘルは、彼らの姿を見つけるや否や、軽やかな足取りで彼らに近づいていった。三人の影は、遺跡へと続く道を軽やかに進んでいく。