ラーンが興奮気味に遺跡の入り口を示した時、イシェは眉間にしわを寄せた。「またこんな場所か?」彼女はため息をつきながら地図を広げた。「ラーン、いつも言うけど、大穴なんてここにないよ。ここはただの崩れかけの石の山だ」
「でもさ、イシェ。ほら、この壁面を見て!」ラーンは熱っぽく言った。「この彫刻、見たことある? どこかで...ああ、そうだ!あの古い書物に載ってたやつだ。伝説の大穴への入り口を示す記号だと!」
イシェは彼の熱狂に冷ややかな視線で応えた。「ただの模様かもしれないわ。それに、仮に大穴への入り口だとしても、この崩れかけた道を通ったら、転落するだけよ」
「大丈夫だ!俺が先導するから!」ラーンは豪快に笑って、すでに足場のない崖を登り始めた。イシェはため息をつきながら、テルヘルに視線を向けた。「どうするつもり?」
テルヘルは静かに剣を構え、冷静な目で崖を見下ろした。「転落するかもしれない危険もある。しかし、大穴への手がかりが見つかる可能性もある。私はリスクを取ります」
イシェは深くため息をついた。「いつも通り、あなたには迷いがないのね」彼女はテルヘルの後をついていった。ラーンの後ろ姿が崩れ落ちる岩壁に消えていくのが見えた時、イシェは一瞬だけ不安を感じた。だが、それはすぐに消え去り、代わりに冷酷な決意に変わり、彼女も崖に続く狭い道を歩み始めた。
彼らは転落の危険を冒し、崩れゆく遺跡へと進んでいった。