「よし、今日はあの崩れた塔跡だ。噂では奥深くにある部屋には、未開の魔道書が眠っているらしいぞ」
ラーンが目を輝かせながら言った。イシェはため息をつきながら地図を広げた。
「また噂話か? そんな本物の魔道書なんて存在するわけないだろう。それにあの塔跡は危険だぞ。崩落箇所も多いし、魔獣が出没するって話もある」
「大丈夫大丈夫!俺が先頭を切って開けばいいんだ。イシェの細工で安全確保もバッチリだしな!」
ラーンは自信満々に胸を張った。イシェは彼の無謀さに呆れながらも、どこか安心していた。彼には不思議な魅力がある。まるで...前世から続く何かのようなものを感じさせるのだ。
「よし、準備はいいか?テルヘルさん、どうしますか?」
ラーンの声に、テルヘルは鋭い目を光らせた。彼女の目的は遺跡探索ではなく、ヴォルダンへの復讐だった。そのために必要な情報や品物を探すため、この二人の力を借りているのだ。
「私は...あの塔跡の奥深くにある、ある特定の石碑を探している」
テルヘルの言葉に、ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。石碑?一体どんな石碑なのか?
「その石碑には...ヴォルダン王家の歴史が刻まれているらしいんだ。そして...私の過去もそこに隠されているはずだ」
テルヘルは静かに言った。彼女の瞳は遠い過去を映していた。ラーンとイシェは、彼女の言葉に深く心を動かされた。
崩れかけた塔跡の奥深く。そこには、石碑がそびえ立っていた。それはまるで...過去の記憶を呼び覚ますかのように、二人の心に響いた。