ラーンが巨大な石の扉を押し開けたとき、埃が舞う中から薄暗い光が差し込んだ。イシェは懐中電灯の光を当てて奥へと覗き込むと、広大な地下空間が広がっているのが見えた。「やっぱり遺跡か…。また大穴には程遠いな」ラーンの肩を落とす言葉に、イシェは小さく溜息をついた。
「でも、何かあるかもしれないじゃん!ほら、あの石像、なんか変だな」ラーンが指差す先には、崩れかけた石像があった。その姿はまるで、巨大な蛇がうねっているようだった。「確かに、独特だなぁ…。もしかしたら、これは…」イシェは石像の周囲を注意深く見回すと、足元に小さな穴を見つけた。「これだ!」
穴の中には、古びた羊皮紙が何枚も詰め込まれていた。イシェが慎重に拾い上げると、そこには複雑な記号で書かれた文字が刻まれていた。「これは…?」「古代ヴォルダン語じゃないか?」テルヘルが驚きの声を上げた。「まさか、ここにヴォルダンの歴史が記されているのか…」
ラーンは興奮気味に言ったが、イシェは眉間にしわを寄せた。彼女は羊皮紙に書かれた文字の配置から、何か不自然な点を感じていた。そして、その直感通り、羊皮紙の裏側には、小さく、かすれた文字で別の文章が書かれていた。「ヴォルダン軍の秘密兵器…」「この遺跡を破壊せよ…」イシェは息を呑んだ。
「これは…ヴォルダンが仕組んだ罠じゃないのか?」ラーンの顔色が変わった。「まさか…」テルヘルも言葉を失った。彼らは、大穴を探す冒険家ではなく、ヴォルダンの陰謀に巻き込まれる存在になっていたのだ。
その時、遺跡の奥から轟音が響き渡り、石壁が崩れ始めた。「逃げろ!」ラーンの叫びと共に、3人は慌てて出口へと走った。だが、出口は瓦礫で塞がれており、脱出は不可能だった。イシェは絶望的な状況に目を閉じると、その時、ラーンの背後から熱いものが吹き出した。
「行くぞ!俺たちが道を切り開く!」ラーンの力強い声が響き渡り、イシェは彼の言葉に希望を感じた。そして、彼女もまた、自分の信念を胸に、この転換点を超えていく決意をした。