ラーンがいつものように大口を開けて笑いながら、遺跡の入り口から飛び出してきた。
「おいイシェ、どうだ！今回は jackpot だぜ！」
イシェは彼の後ろからゆっくりと姿を現し、ラーンの持ってきた石版を眉間にしわを寄せて眺めた。
「またそんな小物を持ち帰ってきたのか。ラーン、いつまでもこの遊びに熱中しているつもりか？あの石版、市場に出してもせいぜい銀貨1枚だぞ」
「うるさいな、イシェ！いつか大穴を見つけるんだ！あの時みたいにね！」
ラーンは目を輝かせた。数年前、彼らは偶然にも古代の墓を発見し、そこには宝石をちりばめた黄金の冠があった。その時の興奮と喜びは今でも鮮明に覚えていた。だが、その後も何件もの遺跡を探検したものの、それほどの価値のあるものは見つからなかった。
「大穴か...」イシェはため息をつきながら石版をラーンの手に返した。「そんな夢ばかり見ている暇はないぞ。ビレーの市場で食材を買わなきゃ食料が尽きてしまう」
その時、背後から涼しげな声が聞こえた。
「大穴？興味深い話だ。もし貴方が本当に大穴を見つけることができたなら、私は喜んでその一部を買い取るよ」
ラーンとイシェは振り返ると、そこにはテルヘルが立っていた。彼女はいつも黒いローブを纏い、鋭い眼差しで周囲を見渡す。
「テルヘルさん！また遺跡に連れてきてくれるんですか？」ラーンの顔がパッと明るくなった。
「そうだな。今回は少し変わった遺跡だ。危険な場所だが、その価値は十分にあるだろう」テルヘルは口元に薄ら笑いを浮かべながら言った。「もちろん、報酬もふさわしいものにするから安心してほしい」
イシェはテルヘルの言葉に少し疑いの目を向けた。彼女はいつも何かを隠しているように見えた。そして、その「報酬」には何か裏があるような気がしてならない。
「よし、行くぞ！」ラーンは意気揚々と答えた。イシェは彼の無邪気さに呆れながらも、テルヘルの言葉を信じきれない自分がいることに気づいた。
三人は遺跡へと向かった。彼らの前に広がるのは、荒廃した石造りの迷宮だった。そこには古代の呪文が刻まれた壁や、奇妙な形の遺物があった。
「ここには何かあるぞ...」ラーンは興奮気味に言った。イシェは彼の様子を見ながら、どこか不安を感じた。遺跡の中を進むにつれ、空気が重くなり、不吉な予感がするようになった。そしてついに、彼らは巨大な石の扉の前に辿り着いた。扉の上には、奇妙な紋章が刻まれていた。
「この扉を開けば、大穴が見つかるかもしれない」テルヘルは言った。「だが、危険も伴うことを覚悟しておけ」