ラーンの大剣が遺跡の奥深くにある石壁を叩き割った。埃が舞い上がり、イシェは咳き込みながら鼻をつまんだ。「また無駄な力加減だ。あの壁はただの石じゃないだろうに。」
「うるさいなぁ、イシェ。宝探しの醍醐味だろ？ 冒険だぜ！」ラーンは胸を張って笑ったが、彼の瞳には僅かな疲労の色が浮かんでいた。最近、遺跡探索で良い成果が出ないことに苛立ちを感じていたのだ。
テルヘルは冷静に状況を分析していた。「壁の材質は特殊な石ではない。魔法の結界の可能性が高い。」彼女は小さな水晶球を取り出し、石壁に向かって光を当てた。「確かに、弱い魔力が残っている。」
「じゃあ、どうするんだ？」イシェは不安そうに言った。「あの結界を解くには？」
テルヘルは薄暗い遺跡に鋭い視線を向けた。「この遺跡の奥には必ず何かがある。ヴォルダンが欲しがっているものだ。それを手に入れれば、私の復讐も成し遂げられる。」彼女は決意を固めたように言った。「危険だが、突破するしかない。」
ラーンの表情は曇った。「テ、テルヘル...俺たちはただの遺跡探検家だぞ？ あんな危険なことに巻き込まれる必要はないだろ？」
「転向した者には過去に戻る道はない。私は今、この道を選んだのだ。」テルヘルの目は冷たかった。「お前たちにも決断を迫る時が来るだろう。」
イシェはラーンの顔をじっと見つめた。彼の瞳に迷いが宿っているのが見て取れた。 しかし、イシェはラーンとテルヘルに挟まれたように、自分の道を見失っていた。彼らと共に遺跡の奥へと進むのか、それともこの危険な計画から身を引くのか。
その答えは、次の瞬間、崩れ始める遺跡とともに明かされることになるだろう。