「よし、今回はあの崩れかけた塔だ! 伝説には、塔の最上階に黄金の王冠が眠っているってな!」ラーンは目を輝かせながら地図を広げた。イシェは眉間にしわを寄せた。「またそんな話? 過去の遺跡調査報告書にも、王冠なんてものは見つかってないって書いてあるじゃないか。」
「ああ、でも今回は違う! なんだか感じるんだ、今回は絶対何かあるって!」ラーンの熱意に、イシェはため息をついた。テルヘルは地図を指さした。「塔の西側には崩落した通路がある。そこの瓦礫の下から何か見つかる可能性がある。私はそちらを調査する。」ラーンの提案とは異なる方向へ進むことを選択したのだ。
「おいおい、待てよ! あれで本当に何か見つかるのか?」ラーンは戸惑ったが、テルヘルの鋭い視線を感じると言葉を飲み込んだ。「わかった、お前たちの邪魔はしない」イシェは冷静に状況を判断し、ラーンと共に塔へと向かった。
テルヘルは瓦礫の山に慎重に近づき、崩れた石を一つ一つ丁寧に動かしていく。彼女の目的は王冠ではない。遺跡の構造や配置から、ヴォルダンの軍勢がどのようにこの場所に侵入してくるかを推測しようとしていたのだ。過去の戦いの記録を分析し、現在のヴォルダン軍の動向を考慮することで、未来の戦況を予測できる。それは、復讐を果たすための重要な軍略だった。
ラーンとイシェは塔の中を進んでいくが、落とし穴や仕掛け罠がいくつも待ち受けていた。イシェの冷静な判断と迅速な対応で難を逃れるたびに、ラーンの無茶な行動にイシェは呆れながらも、彼を支え続ける。
日が暮れかけた頃、イシェは塔の一室で奇妙な模様の壁画を発見した。「これは...何かメッセージのようなもの? 」イシェが壁画を指差すと、ラーンも興味津々で近づいてきた。「もしかして、王冠の場所を示しているのか?」しかし、壁画には王冠らしきものは描かれていなかった。
その時、テルヘルが瓦礫の下から何かを発見した。それは、ヴォルダン軍の紋章が刻印された金属製のプレートだった。「これは...ヴォルダン軍がかつてこの遺跡を利用していた証拠だ」テルヘルは表情を硬くした。「そして、この遺跡には何らかの秘密が隠されているはずだ。私はその秘密を見つけ出す。」彼女の目は鋭く光っていた。
ラーンとイシェは、テルヘルの言葉に少し怖さを感じながらも、彼女と共に遺跡の謎を解き明かそうと決意する。彼らは、自分たちの運命を大きく左右する「大穴」とは何か?そして、その「大穴」が彼らの未来にどのような影響をもたらすのかを知らないまま、危険な冒険へと足を踏み入れていくのだった。