ビレーの薄暗い路地裏で、テルヘルはラーンとイシェに地図を広げていた。地図には、かつてエンノル連合の中でも特に危険な地域とされていた場所が記されていた。
「ここだ。ヴォルダンとの国境に近い遺跡だ。言い伝えによると、そこにはヴォルダンが最も恐れる何かが眠っているらしい」
テルヘルの声は低く、力強い。ラーンは地図を指差して、いつものように豪快に笑った。
「よし、行こうぜ！あの大穴も、俺たちのものだ！」
イシェは眉間に皺を寄せた。「待てよ、ラーン。この遺跡は危険すぎる。ヴォルダンが警戒している場所だ。何か企んでいるのではないか？」
テルヘルはイシェの言葉に頷き、「そうかもしれない。だが、私はリスクを冒す覚悟がある」と静かに言った。彼女の瞳には、復讐への執念が燃えていた。
遺跡の入り口は、朽ち果てた石門で塞がれていた。門を押し開けると、内部はひっそりと静まり返っていた。湿った空気が立ち込め、かすかに金属臭が漂う。ラーンが剣を抜き、イシェは小さなランプを点灯した。
深く進むにつれ、石壁に刻まれた奇妙な文字が目に入る。イシェは眉間に皺を寄せながら、文字の意味を探ろうとしたが、解読することはできなかった。
「何かおかしい…この遺跡、以前とは違う」ラーンが不気味に呟いた。
その時、遠くから軋む音が聞こえた。それはまるで、巨大な歯車がゆっくりと回転するような音だった。ラーンの心臓は激しく鼓動し始めた。イシェは緊張した表情で周囲を見回し、テルヘルは静かに剣を構えた。
その音は次第に大きくなり、地面もわずかに振動し始めた。そしてついに、遺跡の奥深くから、何か巨大な影が姿を現した。