ラーンの大声がビレーの朝の静けさを打ち破った。「よし、今日は必ず何か見つかるぞ!」 イシェはため息をつきながら、食卓に残るパンを片手に言った。「また同じことを言うか。結局いつも何も見つからずに帰るじゃないか。」「そうじゃねえよ! 今回は違う! この遺跡、なんか雰囲気が違うんだ」 ラーンは興奮気味に地図を広げ、イシェに見せた。テルヘルは静かにテーブルに座り、二人を見下ろしていた。彼女は微笑みを浮かべているようにも見えたが、その目は冷たかった。「いいでしょう、二人とも。今日の目標は明確です。あの遺跡の奥深くにあると噂される『紅蓮の玉』。それを手に入れるために協力しましょう」
三人は遺跡へと向かった。深い森を抜けた先に、崩れかけた石造りの門があった。ラーンの剣が門を押し開け、内部へと進む。薄暗い通路は湿気とカビ臭い空気に満ちていた。イシェの足取りが軽やかであるのに対し、ラーンは重々しく歩を進める。テルヘルは二人を後ろからじっと見つめていた。
通路の終わりに広がるのは、巨大な石室だった。中央には、まるで血に染まったような赤い光を放つ玉が安置されていた。紅蓮の玉だ。「よし、やったぞ!」ラーンは歓声を上げた。だが、その瞬間、床から突如炎が噴き上がり、三人は驚きのあまり後ずさった。石室の壁には、無数の魔紋が刻まれており、それらが光り始めた。
「罠だ!」イシェが叫んだ。「逃げろ!」 ラーンの顔色は青ざめた。だが、既に遅かった。炎は彼らを包み込み、三人は絶叫した。
意識を取り戻した時、ラーンは自分の腕に激しい痛みに襲われた。イシェも同様に傷ついており、顔面蒼白で苦しそうに息を切らしていた。テルヘルは冷静さを保ち、周囲を見回していた。「どうやら罠にはかかったようだ…」彼女は呟いた。「だが、まだ諦めるわけにはいかない。紅蓮の玉はまだ手に入る」 ラーンの視線は、炎に焼かれた石室の中央にある紅蓮の玉に向けられていた。彼は立ち上がり、よろめきながら歩を進めた。イシェが必死に彼を制止しようとしたが、ラーンは耳を貸さなかった。
「待て! ラーン!」イシェの声は虚しく響いていた。ラーンの足取りはますます不安定になり、ついに転倒した。その時、彼の目の前を赤い光が横切った。紅蓮の玉だ。それはまるで彼を誘惑するように、ゆっくりと近づいてきた。ラーンの目は輝き、彼は再び立ち上がった。イシェの制止の声は届かなかった。
そして、ラーンは紅蓮の玉に手を伸ばした。