ラーンが巨大な石の扉を押し開けたとき、埃っぽい風が吹き込んできた。イシェは咳き込みながら懐中電灯を点け、薄暗い遺跡内部を照らした。「またしてもハズレだな」イシェは眉間にしわを寄せた。ラーンの豪語とは裏腹に、ここ数回の探索はどれも空振りに終わっていた。
「よし、諦めるか？」イシェが言ったとき、テルヘルが静かに手を挙げた。「待ってください。何かあるかもしれません」彼女は石畳の床を慎重に歩み、足元にある小さな石碑に目を留めた。「これは…古代ヴォルダン語だ」。テルヘルの瞳が光り始めた。「ここに何か隠されているはずです」。
ラーンは不機嫌そうに「またお前か？」と呟いたが、イシェは興味を示した。「どうすればいいんだ？」テルヘルは石碑の模様を指さし、「ここにある記号から、この部屋の中心にある特定の場所を押す必要があるようです」と説明した。
イシェは懐中電灯で床をくまなく照らしながら、「中心…そうか、あの赤いタイルがある場所だな」と呟いた。ラーンの後ろ足が踵をついていることに気づき、イシェは少しだけ笑みを浮かべた。「よし、やってみよう」。
イシェは赤いタイルの上に足を乗せ、ゆっくりと体重をかけ始めた。「何かある？」ラーンの声が響く。「ええっと…」。イシェは床に何かが変化することを期待したが、何も起こらない。
その時、突然床から風が吹き上がり、イシェの足元を吸い込んだ。ラーンが慌てて手を伸ばしたが、すでに遅かった。イシェは深い闇の中に落ちていった。
「イシェ！」ラーンの叫び声が響き渡った。テルヘルは冷静さを保ち、「落ち着いてください。これは罠だ。イシェは生きているはずです」と告げた。「この遺跡には必ず何か秘密があるはずだ。そして、それを解く鍵がイシェの運命に繋がっているのだ」。