「よし、今回はあの崩れた塔だ」
ラーンが地図を広げ、興奮気味に言った。イシェは眉間にしわを寄せながら地図を睨んだ。
「またしても危険な場所じゃないか。あの塔は以前から不安定だって噂だったぞ」
「大丈夫だ、イシェ。俺たちが踏破すれば大穴が見つかるかもしれないじゃないか!」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。いつも通り、ラーンの無計画さに呆れ果てている。しかし、彼を止めることはできない。ラーンは、まるで遺跡の奥底に眠る財宝への強い確信を持っているかのように、目を輝かせていたからだ。
「わかった。今回は俺が準備をしっかりする」
イシェはそう言って、装備を確認し始めた。テルヘルはいつも通り冷静に周囲を見回しながら、二人に指示を出す。
「塔の内部構造は不明瞭だ。慎重に進もう。何か異常があればすぐに知らせるように」
三人は崩れかけた石畳の道をゆっくりと進んだ。朽ち果てた壁には、かつて栄えた文明の痕跡が残されている。しかし、今は静寂だけが支配していた。
「ここは一体何だったんだろうな…」
ラーンが壁に書かれた古びた文字を指さした。イシェは懐中電灯で文字を照らしながら、意味を解読しようと試みた。
「古代の言語だ。おそらくこの塔は…儀式場だったのかもしれない」
イシェの言葉にラーンの目は輝きを増した。
「儀式場か!もしかしたら、そこで何か貴重な遺物が見つかるかもしれないぞ!」
三人は塔の奥深くへと進もうとしたその時、床が崩れ落ちた。ラーンは驚きの声を上げながら下に落下していく。イシェとテルヘルは慌てて駆け寄ったが、ラーンの姿は見えない。
「ラーン!」
イシェが叫んだ。しかし、返事はなかった。崩れた床の下から、かすかな音が聞こえてきた。
「…やれやれ…」
それはラーンの声だった。どうやら彼は怪我をすることなく、下の階層に降り立ったらしい。イシェとテルヘルは安堵のため息をつきながら、崩れた床を慎重に降りていった。
下層では、ラーンが何やら見つけている様子だった。
「おい!見てみろ!」
ラーンの指さす方向には、巨大な石棺があった。その表面には複雑な模様が刻まれており、神秘的な雰囲気を漂わせていた。
「これは…まさか…」
イシェは息を呑んだ。この石棺は、かつての文明の王が眠る場所であるという伝説があったのだ。もしこれが本当なら、中には莫大な財宝が眠っているかもしれない。
「よし、これで大穴が見つかるぞ!」
ラーンの言葉に、イシェとテルヘルも興奮を抑えきれなかった。彼らは石棺を開けるために協力し始めた。しかし、その瞬間、石棺の蓋が開く音と共に、塔全体が激しく揺れ始めた。
「何だこれは!?」
ラーンが驚いて叫んだ。その時、塔の天井から巨大な岩が崩れ落ち、三人を襲ってきた…。