ビレーの酒場「踊る炎」は今日も賑わっていた。ラーンが豪快な笑いを上げると、イシェは眉間にしわを寄せた。
「また大口叩いてるよ。あの遺跡で財宝が見つかるわけないだろ」
「見つかっちゃダメだって!いつか必ず掘り当ててやる!」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。いつも通りのやり取りだが、今回は少し違う気がした。ラーンの瞳に、今まで見たことのない真剣な光が宿っていたのだ。
テーブルの向こうでテルヘルが静かに微笑んでいた。「そうだな、ラーン。今回はいいものを手に入れられるぞ」彼女の言葉に、ラーンの胸が高鳴った。
日が暮れて街の灯りがともり始めると、3人はビレーの郊外にある遺跡へと向かった。入り口付近には、かつて踊るように火を焚いていた台跡が残っていた。今は朽ち果てた石だけが残っているが、かつての賑わいを感じさせる場所だった。
遺跡内部は暗く湿っていた。ラーンの懐中電灯が壁に影を落とし、不気味な雰囲気を漂わせる。イシェは足元に注意しながら慎重に進む。テルヘルは先頭を歩き、時折地図を広げて確認する。
深く潜っていくと、広がる巨大な空洞に出た。天井には鍾乳石がびっしりと生え、まるで巨大な踊り場のように見えた。中央には、光る結晶が埋め込まれた祭壇があった。
「ここだ!」テルヘルは興奮した様子で祭壇に近づいていく。ラーンもイシェも、テルヘルの表情から何か大きなものが見つかる予感がした。
祭壇の上には、小さな箱が置かれていた。テルヘルが慎重に開けると、中から輝く宝石が飛び出した。
「やった!」ラーンの声がエコーを立てて広がる。イシェは思わず息をのんだ。宝石の輝きは、まるで踊り場を照らすように眩しかった。だが、その輝きはすぐに影に覆われた。
突然、背後から冷酷な声が響き渡った。「待てよ、テルヘル。いいものが見つかったようだな」
振り返ると、そこにはヴォルダンの兵士たちが立っていた。ラーンは剣を抜き、イシェも daggersを握りしめた。
「逃げるな!」ラーンの叫びが、踊り場の空洞に響き渡った。