ラーンの豪快な笑い声がビレーの朝にこだました。イシェが眉をひそめて振り返ると、ラーンは錆びた剣を片手に、大きな岩の上で踊るように跳ね回っていた。
「何をしているんだ、ラーン」
「今日はいい感じだ!何か掘り出せそうな気がするんだ!」
イシェはため息をつきながら、準備を整えた。「いつもそんな風に言ってるわよ。遺跡探索なんて、運任せじゃないのよ」
その日は、テルヘルが指定した、山奥の崩れかけた遺跡だった。内部は暗く湿り気があり、石畳の上には苔が生え茂っていた。ラーンはいつものように無茶な跳躍で進もうとするが、イシェは彼を制止した。「落ち着いて。ここは落とし穴が多い」
テルヘルが持ってきた古い地図を照らしながら、慎重に進む。しかし、深い闇の中に潜む危険は地図だけでは読み取れない。突然、足元から崩れ落ちた石畳にラーンが引きずり込まれる。
「ラーン!」
イシェが叫びながら駆け寄る。ラーンの姿はすでに暗闇に消えていた。「大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ!転げ落ちてしまっただけだ」
かすれた声で答えるラーンの声が聞こえた。しかし、彼の声には少し不安の色が感じられた。イシェは懐中電灯の光を下に当てると、ラーンは深い穴の底に転落していた。その穴の深さは、目視では到底測りきれないほどだった。
「どうするんだ?」イシェが恐怖で声を震わせながら尋ねた。テルヘルは冷静に状況を判断し、近くのロープを使ってラーンを救出することを提案した。しかし、穴の壁は滑りやすく、ロープを下ろすことすら困難だった。
その時、ラーンが何かを叫んだ。「イシェ!ここに飛び降りてくれ!」
「何言ってるのよ!そんな危険なことはできないわ!」
「飛び降りないと助からない!跳躍だ!僕を信じて!」
ラーンの言葉は力強かった。イシェは迷った末、彼を信じることを決めた。深呼吸をして、壁に足をかけて大きく跳ね上がった。まるで空を飛ぶように、イシェは穴の底へと落下していった。
ラーンの手の中で、イシェの小さな体が揺れているのが見えた。彼は安堵のため息をつき、イシェの手を握りしめた。「無事だったか?」
「ああ、大丈夫」
イシェは少し震えていたが、笑顔を見せた。「あなたは本当に跳躍が得意なんだね」
その瞬間、穴の上からテルヘルの声が聞こえた。「二人とも無事かい?早く上がってくるんだ!」
ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。この危険な遺跡探検を乗り越えたことで、二人の間に新たな絆が生まれた気がした。