ビレーの喧騒を背に、ラーンは深い森へと足を踏み入れた。イシェが彼をじっと見つめているのが視界に入ると、「何だ、イシェ。いつもみたいに心配してるのか?」と笑って答えた。イシェは小さくため息をつき、「あの遺跡は危険だって聞いたことがある。特に今回はテルヘルが言うようにヴォルダンの兵士が動き回っているらしいんだ」と冷静に言った。
ラーンは「そんなことより、あの遺跡には古代の剣があるってさ!俺が手に入れたらビレーで一番強い男になれるぞ!」と興奮気味に剣を構えた。イシェは彼の熱意に苦笑しながらも、背後から忍び寄る影に気づいた。それはテルヘルだった。「準備はいいか?二人とも」と彼女は鋭い目で言った。ラーンの顔色は少し青ざめたが、すぐにいつもの自信を取り戻した。「もちろんだ!俺たちに任せろ!」
遺跡の入口には、ヴォルダンの兵士が何人か待ち構えていた。テルヘルは影のように彼らをかわし、ラーンとイシェに合図を送る。ラーンは剣を振るい、勢いよく敵に突進した。イシェは素早い動きで敵の攻撃をかわしながら、ラーンの背後を守った。しかし、敵の数には圧倒され始めた。ラーンの攻撃が兵士の盾に跳ね返り、彼の肩に痛烈な衝撃が走った。イシェはラーンを庇いながら、「逃げろ!ここはもう無理だ!」と叫んだ。
その時、テルヘルが目の前の兵士に飛び掛かり、彼を倒した。しかし、その瞬間、彼女の背後から敵の攻撃を受けた。テルヘルは必死に剣を振りかざしたが、攻撃は彼女を貫き、地面に倒れ込んだ。ラーンとイシェは絶句しながら、テルヘルの元に駆け寄った。彼女は血を流しながら、「あの遺跡には...ヴォルダンが...」とつぶやくと息を引き取った。
ラーンの顔から力が抜けていくように、怒りと悲しみが渦巻いた。「絶対に...許さない!」彼は剣を握りしめ、敵に向かって叫んだ。イシェはラーンの背中を押すように、「落ち着いて!今すぐに逃げないと私たちも...」と叫んだが、ラーンの耳には届かなかった。彼はもう、何も考えられずに敵に襲いかかった。