「よし、今回はあの崩れかけた塔だ!噂によると奥に未開の部屋があるらしいぞ!」ラーンの声がビレーの街並みを駆け抜ける。イシェはいつものように眉間にしわを寄せながら彼の背を追った。
「またそんな噂話に飛びつく?あの塔は危険だって言われてるだろう。それに、テルヘルが日当を払うのは遺跡の規模と遺物の価値に基づいてだぞ。無計画な探索では意味がない」
「そうかもしれないけど、大穴を見つけるには時にはリスクを取らなきゃいけないんだ!それに、今回はイシェにも少し冒険心を取り戻して欲しいんだ!」ラーンは振り返り、イシェに目を輝かせた。イシェはため息をつきながらも、結局はラーンの後ろをついていくことになった。
テルヘルは二人が準備を終えるのを冷ややかな目で見ていた。「今回は特に慎重に。ヴォルダンが動き出したらしい。遺跡の奥深くに何かを探しているようだ」彼女の言葉にラーンとイシェは顔を見合わせた。ヴォルダンとの戦いは、彼らにとって直接的な関わりはないはずだった。
崩れかけた塔の中は、埃と影に包まれていた。足元には朽ち果てた石畳が続いており、時折、不気味な音が響く。ラーンが先頭を切り、イシェが後をついていく。テルヘルは二人の様子を見つめながら、何かを探しているようだった。
塔の奥深くまで進むにつれ、空気が重くなっていった。壁には奇妙な文様が刻まれており、不吉な予感が漂う。そしてついに、ラーンが見つけた。未開の部屋に続く扉。興奮を抑えきれないラーンの顔を見て、イシェは改めて不安を感じた。
「この扉を開ける前に、何かあるかもしれない。慎重に進もう」イシェが扉に触れた時、突然、背後から声がした。「待て!」テルヘルが駆け寄り、扉を押し戻した。「ここには罠があるぞ!」
彼女は壁に刻まれた文様を指さし、「ヴォルダンが探しているものとは何か…そして、この遺跡の真実は…」と呟いた。その言葉の意味は、まだラーンとイシェには理解できなかった。しかし、彼らの運命はすでに動き始めていた。
扉の向こう側には、何よりも大きな秘密が眠っていた。そして、それは、ヴォルダンとの戦いに巻き込まれていく彼らの人生を大きく変えることになるだろう。