ラーンの大口を開けた笑いが、ビレーの朝の喧騒に溶け込んでいく。イシェは眉をひそめながら、彼の背後から「またそんな大見栄を切っていても、結局は日銭稼ぎだぞ」と呟いた。ラーンは振り返り、「お前にはわからねえ!いつか大穴を掘り当ててみろ!そうすればお前もこの気持ちわかるぞ!」と豪快に笑う。イシェはため息をつきながら、そんな彼を見つめた。
その日の遺跡は、いつもより深い場所にあった。テルヘルは「今回は特に危険だ。足元には気をつけろ」と警告した。ラーンの足取りは軽やかだが、イシェはいつも以上に慎重に足を進める。地下深くの湿った空気が、彼らの鼻腔を刺激する。
石畳の上を進み、ようやく目標の部屋に到着した。壁には奇妙な文様が刻まれ、中央には巨大な石棺が置かれている。テルヘルは興奮気味に「ここに眠るものは、ヴォルダン王家の人間だ。その遺物があれば、私の復讐は一歩前進する」とつぶやいた。
イシェは石棺の表面を慎重に触れる。「何か感じるものがある…」彼は足裏から伝わってくる僅かな振動を感じ取った。ラーンは「早く開けてくれよ!宝箱か何か入ってるんじゃないか?」と impatienceに駆られているようだった。しかし、イシェは何かが amissだと直感し、テルヘルを制止した。「待て!」
その時、石棺の表面にヒビが入った。ひび割れは瞬く間に広がり、棺の中からは黒い霧が溢れ出す。ラーンは思わず後ずさるが、イシェは足裏で地面を蹴り、後方へ跳ね上がった。
霧は部屋中に広がり、彼らを包み込む。視界はゼロになった。イシェは足音を頼りに、ラーンの位置を探り当てた。「ラーン!大丈夫か!」と叫んだ。
「うっ…」かすれた声が聞こえた。イシェはラーンの手を掴み、霧の中から何とか脱出することに成功した。振り返ると、部屋は完全に黒い霧に飲み込まれ、石棺の姿も消えていた。