「おいラーン、あの石柱、なんか変じゃね？」イシェのささやく声がビレーの賑やかな市場の喧騒を一瞬忘れさせる。ラーンの視線は石柱の上部に向けられた。確かに、そこに刻まれた幾何学模様が他の部分と比べて鮮やかで、まるで光を放っているかのようだ。「ま、いいんじゃないか？ そんな細かいこと気にすんな」ラーンはそう言ったものの、イシェの慎重な様子に少しだけ心を動かされた。
テルヘルは冷静に石柱を調べながら、「この模様、どこかで見たことがあるような…」と呟く。「もしかしたら、あの伝説の『超越の遺跡』のものかもしれないわ」彼女の言葉に、ラーンとイシェは同時に息をのんだ。
「超越の遺跡」は、数多ある遺跡の中でも特に謎に包まれた存在だった。その名は、そこには超越的な力を持った遺物があるという噂から付けられた。だが、その真偽は誰にもわからず、多くの冒険者が命を落としてきた。
テルヘルは続けた。「この遺跡の情報はヴォルダンが握っている可能性が高い。我々は彼らに先んじて、この石柱の秘密を解き明かさなければ」彼女の目は燃えるような闘志で輝いていた。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。冒険心と恐怖が入り混じった複雑な感情を抱えながらも、二人はテルヘルの言葉に頷いた。
深く息を吸い、ラーンは石柱に手を伸ばした。「よし、行くぞ！ 超越の遺跡に挑もう！」彼の力強い言葉は、彼らの運命を大きく変える一つのきっかけとなった。