ラーンの大斧が遺跡の奥深くへと轟き渡った。崩れかけた石壁が塵となり、その向こうに広がるのは、予想外の光景だった。そこには、巨大な水晶球が浮かんでおり、淡い光を放っていた。
「これは…!」イシェは息をのんだ。水晶球から放たれる光は、まるで生きているかのように脈打っている。「一体、何だ?」
「大穴だ!」ラーンは大声をあげ、興奮気味に水晶球へと近づく。「ついに、俺たちに運が巡ってきた!」
テルヘルは冷静に周囲を見回した。水晶球の輝きは確かに凄まじいが、同時に何か不穏な予感も抱かせた。彼女の直感は、この遺跡には何か別のものがあることを告げているようだった。
「待て。」テルヘルはラーンの手を掴んだ。「この場所には何かがある。慎重に調べないと…」
しかし、ラーンの耳には入らなかった。彼はすでに水晶球に手を伸ばそうとしていた。その時、突然、地面が激しく揺れ始めた。壁から石が崩れ落ち、天井からは埃が降り注いだ。
「気をつけろ!」テルヘルはラーンを押し倒した。水晶球の輝きは一層強くなり、その光が激しく脈打つにつれて、遺跡全体が震え上がった。
イシェは恐怖で言葉を失い、ただ二人の様子を見守るしかできなかった。「何だこれは…?」
「ヴォルダンか…」テルヘルは歯を噛みしめた。この状況、この水晶球の力、そしてこのタイミング。すべてがヴォルダンと関連しているように思えた。
ラーンが立ち上がり、震える手で水晶球に手を伸ばした。「俺たちは…」彼はつぶやいた。「俺たちが…この大穴を手に入れるんだ!」
テルヘルは彼の背中を押した。「行くぞ。だが、命を落とす覚悟で。」
水晶球に近づく三人。その光は容赦なく輝き続け、遺跡は崩壊へと向かっていた。彼らの前に広がる未来は、希望と絶望が交錯する混沌の海だった。そして、テルヘルの心には、かつてヴォルダンから奪われたものへの復讐だけでなく、自分自身を苦しめ続けてきた憎しみに対する一つの疑問が浮かび上がってきた。
「赦すのか…?」