ラーンの大斧が石壁を粉砕し、埃が立ち込めた奥へと視線を向けると、イシェが眉間に皺を寄せた。「またしても空っぽか?」
「いや、待てよ。」ラーンは瓦礫の山を蹴散らしながら言った。「何かあるぞ、ここら辺に。」彼の指先が、小さな石片を指差した。それはまるで赤ん坊の握りしめたような、不自然な形をしていた。
イシェが慎重に拾い上げると、表面には複雑な模様が刻まれていた。まるで…「これって、あの遺跡で見つけた記号に似てないか?」
テルヘルが近づき、石片を手に取った。「この記号はヴォルダン王家の紋章の一部だ。だが、こんな場所に…まさか。」彼女は考え込むように呟いた。「まさか、ここがかつてヴォルダンの王宮の隠し通路の一部だったとは…」
ラーンは興奮気味に言った。「つまり、宝庫があるってことか!?よし、イシェ、探検だ!」
イシェはため息をつきながら、石片を懐にしまった。「待てよ、ラーン。落ち着いて考えよう。王家の紋章…だとしたら、この遺跡には何か危険な罠が仕掛けられている可能性もある。
「大丈夫、イシェ。俺たちがここにいるんだから。」ラーンの言葉は自信に満ち溢れていたが、イシェの不安は募るばかりだった。そして、テルヘルは石片を握りしめながら、ヴォルダン王家の秘密と自身の復讐に近づいていることを確信していた。
しかし、その夜、ビレーの街では、謎の赤ん坊が遺棄されたという噂が囁かれていた。