「よし、今日はあの遺跡の奥深くまで入ってみようぜ!」ラーンの豪快な声がビレーの早朝の静けさを破った。イシェはいつものようにため息をつきながら、準備を整えた。「また大穴が見つかるわけないってば」と呟く彼女の言葉は、ラーンには届かなかった。彼はもう遺跡の入り口に立っていた。
「待てよ、ラーン。」テルヘルが静かに彼を制止した。「今日は少し計画的に進もう。あの遺跡は過去に何人もの探検者を失わせている。油断大敵だぞ」
ラーンは渋々頷き、イシェと共にテルヘルの指示に従い、慎重に遺跡へと足を踏み入れた。遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。壁には古びた絵画が描かれており、かつて栄華を極めた文明の面影を感じさせた。
「ここだ。」テルヘルが立ち止まった場所には、崩れかけた石の間から光が漏れていた。「この奥に何かがあるはずだ。だが、罠が仕掛けられている可能性もある。慎重に進もう」
三人はゆっくりと石の間を進んでいく。イシェは細心の注意を払い、足元の石を一つ一つ確認しながら進んだ。ラーンはテルヘルの指示に従いながらも、どこか落ち着きがないようだった。彼はいつもよりも短気で、イシェの制止を振り切って前に進むこともあった。
「何だこれは?」イシェが突然叫んだ。彼女の指さす方向には、石畳の上に小さな箱が置かれていた。箱は精巧な彫刻で飾られており、まるで贈り物のように美しく輝いていた。
「これは…!」テルヘルの顔色が変わった。「これは古代文明の遺物だ。中に入っているものは…」彼女は言葉を濁した。ラーンは目を輝かせながら箱に手を伸ばそうとしたが、イシェがそれを制止した。「待て!罠かもしれないぞ」
しかし、ラーンの好奇心は抑えきれず、彼は箱の蓋を開けた。中からは、金銀宝石で飾られた美しい首飾りが出てきた。
「うわっ!」ラーンは歓声を上げた。イシェも思わず息を呑んだ。それは想像を絶する美しさの品だった。だが、その瞬間、箱から毒ガスが噴き出した!ラーンは思わず coughing cough し始めた。イシェは素早く彼を引きずり、テルヘルと共に遺跡の外へ逃げ出した。
彼らは辛うじて命拾いをしたものの、ラーンの姿は青白く、苦しそうに咳き込んでいた。
「あいつ…」イシェが怒りと悲しみをこめて呟いた。「あの贈り物、罠だったのか?」
テルヘルは深く頷いた。「この遺跡には多くの罠が仕掛けられている。そして、その多くは古代文明の遺物によって作られたものだ」彼女はラーンに駆け寄るイシェを静かに制止し、「今はラーンの命を優先しよう。まずは安全な場所に移動して、彼を治療しなければならない」
イシェはテルヘルの言葉を聞いても、まだ怒りと悲しみでいっぱいだった。ラーンが贈り物によって命を落とすかもしれないという恐怖に震えていた。しかし、同時に、彼女は自分がラーンのために命懸けで危険を冒したテルヘルにも感謝の気持ちを感じていた。
三人は安全な場所に移動し、ラーンを治療することに集中した。だが、イシェは心の中で誓った。この出来事を忘れることはない。そして、この遺跡が持つ真実に迫るため、彼女はどんな危険も恐れずに立ち向かう決意をした。