「よし、今回はあの廃墟都市だ。地図によると、かつての王宮跡らしいぞ」ラーンの声は興奮気味だった。イシェは眉間に皺を寄せながら、「また大穴の話か? そんな夢物語を追いかけるより、もっと現実的な仕事を見つければ良いのに」と呟いた。だが、ラーンは彼女の言葉を耳に留めず、テルヘルに向かって「どうだ、テルヘル! 王宮跡ならきっと何か見つかるはずだろう? きっと素晴らしい宝物、いや、贅沢品が眠っているに違いない!」と目を輝かせた。
テルヘルは冷静に「情報によれば、王宮にはヴォルダンの魔の手が伸びていたようだ。危険な場所かもしれない」と警告したが、ラーンの熱意を抑えることはできなかった。イシェも、彼を説得するよりも、危険を避けるために準備をすることにした。「よし、わかったわ。今回は念のため、防御用の魔法道具も多めに持っていくわ」
廃墟都市へ向かう途中、ラーンは「いつか俺は、この世界で一番豪華な屋敷に住むんだ! 贅沢三昧の毎日を送るぞ!」と豪語した。イシェはため息をついた。「またあの話か...」。テルヘルはラーンの夢を嘲笑する様子を見せつつも、彼の瞳に宿る強い意志を感じ取っていた。
廃墟都市に到着すると、そこはかつて栄華を極めた街の姿を留めているように見えた。崩れかけた石造りの建物群、朽ち果てた庭園、そしてそこに生息する奇妙な生物たち... 静寂の中に不気味な緊張感が漂っていた。彼らは慎重に王宮跡へと進み、地下深くへと続く階段を発見した。
階段の先に広がるのは、かつての王宮だった壮大な部屋だった。壁には豪華なフレスコ画が描かれており、床には貴重な宝石が敷き詰められていた。だが、その輝きは今は薄れ、埃に覆われていた。
「...すごい...」ラーンの声が震えていた。「こんな贅沢品が...!」イシェは宝の山を前に目を輝かせたが、同時に警戒心を高めていた。テルヘルは静かに周囲を観察し、何かを感じ取ったかのように剣を握り締めた。
その時、部屋の奥から不気味な音が響き渡った。それは、まるで獣の咆哮のようでありながら、どこか人間の声にも聞こえた。ラーンの顔色が変わった。「これは...!」イシェは慌てて武器を取り出した。テルヘルは冷静に「何者かに襲われるぞ! すぐに逃げろ!」と叫んだ。
しかし、その声は既に届かなかった。部屋の奥から巨大な影が姿を現し、三人は絶望的な状況に陥った。