「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。地図には地下室があるらしいぞ」ラーンが目を輝かせながら遺跡の入り口を見つめた。イシェは眉間に皺を寄せた。「また危険な場所か？ そんなリスクの高い遺跡に挑む前に、ビレーで新しい依頼を探すべきじゃないのか？」「いやいや、イシェ。大穴はこの塔にあるって感じるんだ！ 俺の直感が言うんだよ！」ラーンは剣を手に取り、軽快に塔へと向かった。
イシェはため息をつきながらラーンの後を追う。テルヘルは二人がやり取りを終えるのをじっと見ていた。「あの塔か… 確かに興味深い場所だ」彼女は呟き、鋭い視線をラーンに向けた。「今回の報酬はいつもの倍にする。塔の地下室に何か価値のあるものがあれば、全て我々が手に入れることになる」
ラーンの顔からさらに笑顔が溢れ出した。「やった！ さあ、イシェ、準備はいいか？ 大穴を掘り当てて、ビレーで豪遊だ！」
三人は塔へと入っていった。崩れかけた石畳の上を慎重に歩き、埃っぽい空気を吸い込みながら奥へと進んだ。地下室への入り口は崩落し、行く手を阻んでいた。ラーンの力強い一撃が岩盤を砕き、狭い通路が現れた。
「よし、ここだ！」ラーンが先頭で進んでいく。イシェは後ろから彼に注意深く目を配りながら続く。テルヘルは二人の動きを冷酷な目で追っていた。彼女の視線は常に、遺跡の奥深くに潜む何かを探しているかのようだった。
地下室は広くて暗く、薄暗い光が壁に反射していた。そこには、奇妙な模様が刻まれた石棺がいくつも並んでいた。ラーンは目を輝かせ、興奮気味に棺を調べ始めた。「これは…！」彼は石棺の一つから小さな箱を取り出した。
「何か見つかったのか？」イシェが近寄って来た。ラーンの手には、古びた金貨と、奇妙な紋章が刻まれた小さな宝石が入った箱があった。「これは… ヴォルダン帝国の紋章だ」テルヘルは硬く言った。彼女の目は鋭く光り、何かを悟ったようだった。
「ヴォルダンか…」イシェは呟いた。「あの大国と関係があるとは…」ラーンは興奮気味に箱の中身を覗き込んだ。「これは一体何だ？ 大穴の鍵かな？」彼は宝石を手に取り、目を輝かせた。その時、突然、塔全体が激しく揺れ始めた。
「なんだ！？ 」ラーンはバランスを崩し、よろめいた。イシェは慌てて彼を支えた。「これは…！」テルヘルが叫んだ。「この遺跡、ヴォルダン帝国の監視下に置かれていたのだ！ 何かを感知したのかもしれない！」
その時、石棺の一つから黒煙が立ち上り始めた。煙と共に、不気味な声が響き渡った。「汝ら、この地に踏み入った者よ… 」
ラーンの顔色が変わった。「これは…」彼の声は震えていた。「これは、本当に大穴なのか？」