ラーンの大斧が遺跡の奥深くにある石壁に激突した。埃が立ち込め、視界が一瞬遮られた。
「よし、これで道が開けたぞ!」
ラーンは興奮気味に叫んだが、イシェは眉間に皺を寄せた。
「待て、ラーン。あの崩れた壁の奥には何があるのか分からない。罠かもしれない。」
「罠だと?そんなこと気にしたら遺跡なんて探せないよ!ほら、テルヘルも言ってるだろう?この遺跡にはきっと大物があるって!」
イシェはラーンの言葉に反論しようとしたが、テルヘルが口を開いた。
「イシェの言う通りだ。慎重に進もう。ここはヴォルダン兵が以前調査した場所らしい。何か残されている可能性がある。」
テルヘルの冷静な判断に、イシェは少し安心した。彼女はいつもラーンの熱意に巻き込まれてしまうが、テルヘルがいるおかげで命拾いをすることも多い。
遺跡の奥へ進むにつれ、空気が重くなった。壁には不気味な模様が刻まれており、床には歪んだ石畳が敷き詰められていた。
「ここ…何か変だ…」
イシェは小声で呟いた。ラーンは気にせず、興奮気味に遺物を探していたが、イシェは背筋をゾッとするような感覚に襲われた。
すると、壁の奥から光が差し込んできた。それはまるで、誰かが彼らを待っていたかのように。
「あれは…!」
ラーンの視線は光に向かって釘付けになった。そこには、金銀財宝が山積みになっていた。
「やった!大穴だ!」
ラーンは大喜びで駆け寄ろうとしたその時、床が突然崩れ、ラーンは深い穴に落ちてしまった。
イシェとテルヘルは慌てて駆け寄り、ラーンの声を聞いた。
「大丈夫か?ラーン!」
「ひっ…助けて…」
イシェは手を伸ばしたが、ラーンの姿が見えない。深い闇の中に、かすかに彼の声が響いていた。
「ここは罠だ…気をつけろ…」
イシェは恐怖と不安に襲われた。だが、その時、テルヘルが冷静に言った。
「イシェ、落ち着いて。これはヴォルダンの策略だ。ラーンを捕らえるために仕掛けられた罠だろう。」
テルヘルの言葉に、イシェはハッと我に返った。
「ヴォルダン…!」
イシェの怒りは増していった。ラーンを救うためにも、そしてヴォルダンへの復讐を果たすためにも、彼女は冷静さを保つ必要があった。
「テルヘル、どうすればいい?」
「まずは、この遺跡から脱出するんだ。ラーンの代わりに、我々がヴォルダンに賞罰を執行する時が来る。」
テルヘルの目は冷酷な光を放っていた。イシェは頷き、深い闇の中に消えていくラーンの叫び声を聞きながら、決意を新たにした。