ビレーの夕暮れ時、ラーンが酒場で大声をあげている。イシェはため息をつきながらテーブルの端に座り、テルヘルは静かに酒を飲んでいた。「またか。あの遺跡は危険だと言っただろうに！」イシェは眉間に皺を寄せた。「いいんだ、いいんだ！今回は違うって言うんだよ。あの奥深くに眠ってるって、巨大な宝が！」ラーンの目は夢を追い求めるように輝いていた。テルヘルは冷静に「では、準備は整っていますか？」と尋ねる。「もちろんだ！俺たち最強のチームだろ？」ラーンは豪快に笑う。イシェは呆れ顔で、「準備なんて何もしてないでしょ」と呟いた。
翌日、遺跡へと続く道を歩く三人の後ろ姿は、夕陽に照らされて長く伸びていく。ラーンの背中には大きな剣が担がれており、イシェは細身の体で素早く周囲を見回している。テルヘルは両手に巻かれた黒い手袋を握りしめ、静かに歩を進める。遺跡の入り口付近では、奇妙な模様が刻まれた石碑が建っていた。「ここだ！」ラーンが石碑に手を当てた瞬間、地面が激しく震え始めた。
「これは…！」イシェは驚愕する。「待て！何か変だ！」テルヘルの声も慌てている。「うおおお！！」ラーンの叫び声が吹き飛ばされるように、遺跡の入り口から巨大な影が現れた。それはまるで巨大な獣のような形をしており、石碑に刻まれた模様が浮かび上がっていた。その影はゆっくりと動き始め、三人に襲いかかってきた。ラーンは剣を抜き立ち向かう。「イシェ、テルヘル！逃げろ！」ラーンの叫び声と共に激しい戦いが始まった。
イシェは素早く動き回り、影の攻撃をかわしながらラーンに指示を出した。テルヘルは冷静さを保ち、影の弱点を探るために観察を続けている。しかし、影の力は強大で、三人は次第に追い詰められていく。ラーンは傷つきながらも剣を振り下ろす、イシェは息切れしながらも動き続けようとする。テルヘルは、影の攻撃を避けながら何かを呟いていた。「この力…私は知っている…これは…」
その時、テルヘルの目の奥が光り輝き始めた。彼女は何かを思い出したように、ゆっくりと手を伸ばし、影に向かって叫んだ。「汝の賜物とは、汝自身の破滅なり！」影は一瞬静止し、その後、激しい光を放ちながら崩れ落ちていった。三人は息も絶え絶えに立ち上がり、遺跡の入り口を見渡した。
崩壊した影の跡地には、不思議な石が一つ残されていた。テルヘルはゆっくりと石を拾い上げ、目を細めた。「これは…」彼女は静かに呟き、ラーンとイシェを見つめた。彼らの未来を変えるものなのか、それとも破滅をもたらすものなのか。その答えは、まだ誰にも分からなかった。