「おい、イシェ、今日は何の遺跡だ？またあの薄汚い洞窟か？」ラーンが不機嫌そうに言った。イシェは地図を広げて確認し、「今回はビレーから北西にある、旧王国時代の要塞跡らしいわ。テルヘルさん曰く、そこには古代の文書が眠っている可能性があるって」と答えた。「文書か…また宝の地図とかじゃないのかよ！」ラーンは肩を落とした。
最近、遺跡探索で手に入るものは、ほとんどが錆びた武器や壊れた陶器といった価値のないものばかりだった。そんな中、テルヘルはいつも高額な報酬を提示し、遺跡の場所や目的を明確に伝えるため、二人は彼女に従い続けていた。しかし、ラーンの心の中には漠然とした不安が渦巻いていた。「本当にこの仕事でいつか大穴が見つかるのか？」
イシェはラーンの様子を見て、「心配する必要はないわ。テルヘルさんはいつも約束通り報酬を払うし、今回は文書なら価値が高い可能性もあるじゃない」と励ました。だが、ラーンの心は落ち着かなかった。
遺跡の入り口にたどり着くと、テルヘルが待っていた。「今日は特に慎重に進みましょう。この要塞跡には罠が残っている可能性があります」と彼女は冷たく告げた。二人は頷き、テルヘルの後をついて遺跡の中へと入った。
暗い通路を進み、崩れた壁や朽ちた石像が立ち並ぶ中、ついに大広間に出た。そこには巨大な書庫があり、埃をかぶった古い巻物が無数に並んでいた。「ここだ！古代の文書はここに眠っているはずだ」テルヘルは目を輝かせた。
二人が書庫を探索し始めると、イシェが一枚の羊皮紙を見つけた。それは、複雑な記号で書かれた地図だった。「これは…！」イシェは息をのんだ。「この地図は、伝説の大穴に繋がる場所を示しているかもしれない…」
ラーンの顔色が変わった。「本当か？もしそうなら…」彼は目を輝かせた。イシェは冷静さを保ちながら、「でも、地図だけでは大穴を見つけられるとは限らないわ。資金も必要だし、危険な場所へ行くことになるかもしれない」と警告した。
ラーンは深く息を吸い込み、「わかった。リスクは承知の上だ。だが、このチャンスを逃すわけにはいかない！」彼は決意を固めた。三人は地図を手に、大穴を求めて新たな冒険へと出発した。