ラーンの大斧が岩盤を叩き割る音だけが、遺跡の静寂を破った。埃っぽい空気を切り裂くように、イシェが懐中電灯を振る。薄暗い通路の先には、崩れかけた石柱が何本も立ち並び、天井からは鍾乳石が鋭く突き出していた。
「ここだな」
テルヘルがそう言うと、足早に奥へと進んだ。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせ、肩をすくめた。いつも通り、テルヘルの目的はよく分からなかった。ただ、遺跡探しの依頼を引き受けた以上、彼女についていくしかなかった。
「ここには何かあるはずだ」
テルヘルが石柱の隙間を指差した。そこに、わずかに光る金属片が埋め込まれているのが見えた。イシェが慎重に石を動かすと、そこには小さな箱が現れた。
「これは…」
イシェが箱を開けると、中にはぎっしり詰まった水晶の粉末が入っていた。テルヘルは目を輝かせ、それを手に取った。
「これだ。これがヴォルダンが欲しがっているものだ」
彼女は粉末を握りしめると、ラーンとイシェに言った。
「この遺跡には、ヴォルダンが欲しがる資源が眠っている。俺たちはそれを奪い、彼を打倒するんだ」
ラーンの顔色が変わった。いつもは軽い口調の彼だが、今回は何かを悟ったように沈黙を守っていた。イシェも同様に言葉を失い、テルヘルの瞳に映る憎悪をじっと見つめていた。この遺跡から持ち帰った水晶の粉末が、本当にヴォルダンを打倒する力になるのか、それとも新たな争いの火種となるのか。二人の心には不安と希望が入り混じっていた。