「おい、イシェ、今日はいい感じの予感がするぞ!」
ラーンがそう叫びながら、錆びたつるはしを肩に担いで遺跡の入り口へと向かった。イシェはため息をつきながら彼の後を続いた。
「また大穴だと?そんな甘い話があるわけないだろう」
イシェは地図を広げ、慎重に周辺の地形を確認した。ラーンの無計画さにいつも呆れていたが、彼にはどこか不思議な魅力があった。それに、このビレーではなかなか稼げる仕事はないのだ。
「まあ、何か面白いものが見つかるかもしれないしね」
イシェはそう呟き、後ろから続くテルヘルの足音を聞いた。彼女はいつも冷静沈着で、まるで影のようにラーンたちを監視しているようだった。
遺跡内部は湿気を帯びた冷気と埃の臭いが漂っていた。彼らは互いに懐疑的な視線を交わしながら、暗い通路を進んでいった。
「ここら辺り、何かあった気がするな」
ラーンが壁を叩くと、かすかな空洞音が響いた。彼は興奮した様子で石をこじ開け始めた。イシェは彼の行動に眉間に皺を寄せながら、警戒を怠らなかった。テルヘルは静かに周囲を警戒し、鋭い視線で遺跡の奥深くを伺っていた。
「おおっ!これは…!」
ラーンの叫び声と共に、石壁から小さな箱が姿を現した。イシェが近寄ると、箱には複雑な模様が刻まれていた。
「珍しいものだね…」
テルヘルは箱を慎重に開け、中に入っていた小さな水晶球を取り出した。その瞬間、彼女は目を輝かせた。
「これは…!」
水晶球に触れた瞬間、テルヘルの顔色が変わった。まるで何かを思い出すように、彼女の瞳が燃えるように光り始めた。
「これは、ヴォルダンに奪われた『資本』の一部かもしれない…」
彼女は呟き、水晶球を握りしめた。ラーンの大穴への夢もイシェの現実主義も、この瞬間、全てがかすんでしまった。テルヘルは復讐を果たすために、この小さな水晶球が持つ力を利用しようと決意したのだ。