ラーンが剣を抜き放つ音が、埃っぽい遺跡の奥深くで反響した。イシェは眉間にしわを寄せて、彼を睨んだ。「またか、ラーン!あの石像は動かないぞ!」
「いや、でもさ、もしかしたらなにかあるんじゃないか?ほら、この模様、よく見りゃ…」
ラーンの指が石像の表面を撫でると、イシェはため息をついた。ラーンはいつもこうだ。計画性はなく、目の前のものに興味津々で、そのせいで遺跡探索はいつも予定より時間がかかる。だが、彼の楽観的な性格と、仲間を想う気持ちにはイシェも惹かれていた。
「わかったわかった。でも、次の石像は触らないでくれよ。」イシェはそう言って、壁に刻まれた古代文字の解読に集中した。
その時、遺跡の奥からテルヘルが声をかけた。「何か発見があったようです。」
テルヘルはいつも冷静沈着だ。彼女の目は鋭く、言葉は少ないが、その存在感は圧倒的だった。ラーンとイシェを雇ったのも、単なる遺跡探索のためではないことは彼らも感じていた。
テルヘルは、ヴォルダンという大国に何かしらの深い恨みを抱いているようだった。そして、その復讐を果たすために、遺跡の奥深くに眠る謎の力を求めているらしい。
「これは…!」
テルヘルの声が震えた。「古代の地図だ。ヴォルダンに隠されているという伝説の宝物の場所を示しているかもしれない。」
ラーンは興奮した様子で目を輝かせたが、イシェは冷静さを保った。「地図だけでは何もわからない。ヴォルダンとの関係や、その宝物の真意など、多くの謎が残っている。」
テルヘルは地図を握りしめながら言った。「この地図を手に入れるために、私はあらゆる手段を使う。そして、ヴォルダンに全てを奪い返すのだ!」
イシェはテルヘルの言葉に背筋が寒くなるような気持ちを抱いた。彼女は本当に目的のためなら手段を選ばないのか?
その時、ラーンの声が聞こえた。「よし!宝物を探すぞ!イシェ、テルヘル、ついてこい!」
ラーンは、地図を片手に遺跡の奥へと進んでいった。イシェはため息をつきながら、彼の後を追いかけた。
テルヘルは地図をじっと見つめて、静かに呟いた。「この地図…ヴォルダンが手に入れることを阻止するため、あらゆる力を利用する必要がある。」
彼女の言葉から、イシェは不吉な予感を覚えた。この遺跡探索は、単なる宝探し以上の何かへと発展していくのを感じた。そして、その中心には、テルヘルの復讐心と、それを利用しようとする何者かの影があった。