「よし、今回はあの崩れかけた塔だ！ 噂によると奥に秘宝が眠っているらしいぞ！」ラーンは目を輝かせ、剣を肩に担いだ。イシェはため息をつきながら地図を広げた。「また unfounded rumor かい？ そんな話、街中の酒場で耳にするわよ」
「でも、今回は違うと思うんだ！ この地図をよく見てみろ、イシェ。塔の内部構造が詳しく描かれてるぞ！ きっと本物だ！」ラーンの熱意に押されて、イシェは地図を再び確認した。確かに、他の遺跡の地図とは異なり、詳細な書き込みがあった。
「よし、わかったわ。今回はラーンの意見に従うことにする。でも、もしまた大穴ではなく、ただの石ころが出てきたら、二度とそんな話を聞かせてよ！」
「もちろんだ！ さあ、出発だ！」ラーンは先陣を切って崩れかけた塔へと向かった。イシェは彼についていくが、後ろからテルヘルを見つめていた。「あの二人には、一体何を見せてあげればいいんだろう…」テルヘルは呟きながら、小さな宝石の入った袋を握りしめた。
塔の中は暗く、湿った空気が漂っていた。石畳の上には苔が生え、足元の崩れかけた石段では、ラーンの大きな足音が響いた。「ここは確かに危険だぞ」イシェは緊張した様子で周囲を見回していた。「気をつけろ、イシェ！」ラーンは剣を構えながら、一歩ずつ塔の奥へと進んでいった。
彼らは崩れた壁を乗り越え、暗い通路を進み、ついに塔の中心部へとたどり着いた。そこには、円形の部屋があり、中央には石でできた祭壇があった。祭壇の上には、光り輝く宝箱が置かれていた。「やった！ ここに秘宝が眠っていたんだ！」ラーンの目は輝き、興奮を抑えきれずに宝箱に手を伸ばした。
しかし、その時、イシェは何かを察知してラーンの腕をつかんだ。「待て！ あれは罠かもしれない！」イシェの警告は遅かった。宝箱に触れた瞬間、部屋全体が震え始め、天井から石が崩れ落ちてきた。ラーンは咄嗟にイシェを庇い、自ら石雨を受け止めた。
「ラーン！」イシェは叫び、ラーンの元に駆け寄った。彼は意識を失っていた。イシェは慌てて彼を運び出し、安全な場所へと避難した。
「一体何が起こったんだ？」テルヘルが駆けつけた時、イシェはラーンを心配しながら、宝箱の罠について説明した。テルヘルは冷静に状況を分析し、「この遺跡は危険すぎる。ここで時間を無駄にするわけにはいかない。ラーンの治療費と引き換えに、宝箱の中身を私に渡せ」と提案した。
イシェはためらったが、ラーンの命を優先するために、渋々同意した。テルヘルは宝箱を開け、中から金貨や宝石を取り出した。しかし、彼女はそれらをすぐに自分のものにするのではなく、イシェに手渡した。「これはラーンの治療費だ。そして、彼を助けたご褒美だ」とテルヘルは言った。
イシェは驚きながらも、テルヘルに感謝の意を表した。そして、意識不明のラーンを連れて、ビレーへと戻っていった。