「よし、今日はここだな」。ラーンが、地図を広げながら言った。イシェは眉間に皺を寄せた。「また、あの辺境の遺跡か? 危険度が高いって聞いたぞ」。
「大丈夫だ、大丈夫!俺が守るからな」。ラーンは胸を張ったが、イシェは彼の自信に懐疑的な目を向けた。彼らはビレーで暮らす貧しい探索者だった。日々の食料を得るため、危険な遺跡に挑む日々を送っていた。
「今回はテルヘルさんが高額の日当を出してくれたんだろ? 何か手がかりでも掴んだのか?」イシェは尋ねた。「ああ、そうだな」。ラーンは目を輝かせた。「テルヘルさんいわく、あの遺跡には、かつての王家の宝物庫があるらしいんだって! もしかしたら、大穴が眠っているかもしれない!」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観的な性格と、その夢を信じる純粋さは、彼を好きでいられる理由でもあった。しかし、現実的に考えれば、宝物を発見できる確率は極めて低い。それでも、貧しい彼らは、わずかな希望にすがるしかなかった。
遺跡の入り口に着くと、テルヘルが待っていた。「準備はいいか?」彼女は鋭い視線で二人を見つめた。「あの遺跡は危険だ。慎重に行動するんだ」。
遺跡内部は暗く湿気を帯びていた。壁には古びた壁画が描かれており、かつて栄華を極めた王国の姿を物語っていた。ラーンは興奮気味に壁画を指さした。「見てみろ!すごい建造物だ!」
イシェは警戒心を強める。「気をつけろ、ラーン。何かいるかもしれない」。その時、奥の方から不気味な音が聞こえた。
「何だ?」ラーンの顔色が変わった。テルヘルが剣を抜いた。「敵だ!準備しろ!」
影から何者かが飛び出して来た。貧しい探索者たちが集まって戦うことは珍しくなく、彼らは互いに助け合いながら生き延びてきた。しかし、この遺跡の奥深くに潜む影は、彼らには想像を絶する脅威となるだろう。