「よし、今回はあの奥の部屋だな!」ラーンが目を輝かせ、遺跡の崩れかけた通路を駆け抜けた。イシェはため息をつきながらそのあとを追った。「また行き当たりばったりかよ。計画性がないのは分かってるだろう?」
「計画なんていらない!俺の直感が正しいんだ!」ラーンの背中にイシェは呆れた顔で呟いた。
テルヘルは彼らを静かに見つめていた。「二人とも、落ち着きなさい。あの部屋には何かあると確信している。しかし、罠の可能性もある。慎重に進もう。」
テルヘルの言葉にラーンも少しだけ気を引き締めた。彼女はヴォルダンへの復讐を誓う冷徹な女性だが、遺跡探索においては冷静な判断力を持ち、彼らを何度も危機から救ってきた。
部屋の奥には、埃をかぶった石棺が置かれていた。ラーンの興奮を抑えきれず、すぐに蓋を開けようとしたが、イシェが制止した。「待て!罠の可能性もあるぞ!」
イシェは慎重に棺の周りを探り、石畳の下に仕掛けられたワイヤーを発見した。「ここだ。このワイヤーに触れると、天井から矢が降り注ぐ仕掛けになっている。」
イシェの冷静な判断で危機を回避し、無事石棺を開けることができた。中には金貨や宝石で埋め尽くされた小さな箱があった。ラーンは目を丸くして叫んだ。「やった!大穴だ!」
しかし、イシェは冷静に言った。「これは大穴ではない。ただの財宝だ。真の大穴はまだ見つかっていない。」
「そうだな。」テルヘルも同意した。「だが、この財宝も悪くない。これでしばらくは食うに困ることはないだろう。」
ラーンは少し意気消沈した様子だったが、すぐに笑顔を取り戻した。「そうだ!これでまた次の遺跡を探せる!」
三人は財宝を運び出し、夕暮れの街へと戻っていった。彼らにとって、財宝は単なる財産ではなく、夢を叶えるための手段に過ぎなかった。そして、真の大穴を見つけるために、彼らは今日も遺跡に挑んでいく。