「よし、準備はいいか?」ラーンが重い斧を肩に担ぎながら、イシェの方を見た。イシェはいつものように細身の体を引き締めて、地図を広げていた。「準備は完了だ。今回はあの古代都市跡地だ。遺跡調査報告によると、そこには未開の地下空間があるらしい」
「未開空間か…ワクワクするな!もしかしたら、そこで財宝が眠ってるかもな!」ラーンの目は輝き、イシェはため息をついた。「また大穴の話か。落ち着いて、まずは安全確認だ。テルヘルさんの指示に従うこと」
テルヘルは影のように二人の後ろから現れた。「準備はいいですか?」彼女の鋭い視線は二人を貫く。「今回は慎重に進みましょう。ヴォルダンが狙っている遺跡だと情報が入っています。彼らには何としても手に入れられないものがあるのです」
遺跡の入り口は崩れ落ちた石造りの門だった。ラーンが斧で門をこじ開けると、内部は薄暗い空気に包まれていた。「よし、行こう!」ラーンの背中はいつもどおり勇敢だったが、イシェは何かを感じ取っていた。この遺跡には単なる財宝以上のものが眠っているような気がしたのだ。
地下空間への入り口は狭く、滑りやすい岩が続く険しい道だった。テルヘルは先頭を歩き、地図を頼りに慎重に進んだ。ラーンは後ろからイシェを守りながら、テルヘルの指示に従いながらも、財宝にまつわる妄想を膨らませていた。
「ここだ」テルヘルが言った時、目の前には巨大な石の扉があった。扉には複雑な模様が刻まれていて、古代の魔力が感じられた。「この扉を開けば、我々が求めるものは手に入るはずだ」テルヘルは力強く言った。イシェは扉に刻まれた模様をじっと見つめた。
「何か…変だ…」イシェの言葉にラーンとテルヘルが振り返ると、扉の模様がゆっくりと光り始めた。「これは…!」テルヘルの顔色が変わった。「ヴォルダンが先に来たのか…!?」
その時、扉が轟音と共に開き、背後から何者かが姿を現した。それは、黒い鎧を身にまとったヴォルダンの兵士だった。彼らは冷酷な表情で剣を抜き、三人に襲いかかった。
「逃げろ!」テルヘルが叫んだ。ラーンはイシェを連れて扉の向こうに逃げるように駆け込んだが、後から追ってきた兵士の一人がイシェに襲い掛かった。ラーンの斧が兵士を切り裂き、イシェは間一髪逃げ延びた。「イシェ!」ラーンはイシェを抱え上げ、再び扉へと走った。
扉は閉まり、三人はヴォルダン兵士に取り囲まれた。その時、イシェは扉の模様に気がついた。「あの模様…財宝を守るための罠なのか…!?」イシェが扉を触れた瞬間、床から光が放たれ、兵士たちは苦しみ声を上げながら消滅した。
三人は息を切らしていた。「まだ、安全じゃない」テルヘルは言った。「ヴォルダンは必ず再び来るだろう。そして、我々は彼らよりも先に財宝を手に入れる必要がある」イシェは扉の光をじっと見つめた。財宝とは一体何なのか?そして、なぜヴォルダンがそこまでしてそれを手に入れようとするのか?
三人の運命は、この遺跡に眠る謎と共に、新たな章へと進んでいく。