「おい、イシェ、今日はここだな!」ラーンが興奮気味に遺跡の入り口を示した。イシェは眉間にしわを寄せながら地図を確認した。
「またも大穴を期待しているのか?あの洞窟はすでに調査済みだぞ。何も見つからなかった」
「そうかな?もしかしたら見落としてるものがあるかもしれないじゃないか!それに、テルヘルがくれた報酬だっていい額だろ?」ラーンは笑って答えたが、イシェは彼の楽観的な態度に懐疑的だった。彼らはいつもこの調子で遺跡を探検し、大金を夢見ていたが、現実はそう甘くなかった。
「確かに、報酬は魅力的だ」とイシェは呟くと、テルヘルを思い出した。「彼女は一体何のためにこんな危険なことを繰り返しているんだろう?」
テルヘルは常に冷静沈着で目的意識がはっきりしていた。彼女の話から推測するに、ヴォルダンとの復讐を果たすためには莫大な資金が必要なのだろう。そして、その資金源として遺跡の遺物を狙っているのだと思った。
「イシェ、どうしたんだ?顔色が悪いぞ」ラーンの声がイシェを引き戻した。
「いや、何もない。準備はいいか?」イシェは深呼吸をして立ち上がった。洞窟の入り口に近づくと、冷たい風が吹き付けてきた。
「よし、行こう!」ラーンが先頭に立ち、洞窟の中へと消えていった。イシェは彼を追いかけながら、テルヘルの目的と彼らの未来について考え続けた。