太陽の光が容赦なく照りつけるビレーの広場。ラーンは酒樽を片手に、豪快な笑い声を上げていた。イシェはため息をつきながら、彼の肩を叩いた。「また無駄遣いしてる。そんな金で何も得られるわけないでしょう」。ラーンは「大丈夫だ、今日はきっと大穴が見つかる!そうしたらみんなで豊かに暮らせるんだ!」と、目を輝かせた。イシェは彼の楽観性に呆れながらも、どこか安心する部分があった。
その日は、テルヘルが指定した遺跡に向かうことになっていた。彼女はいつもより早くビレーに着き、ラーンとイシェに厳しく指示を出していた。「今回は慎重に進めよ。あの遺跡には危険な罠が仕掛けられているという噂がある」。ラーンは「わかったわかった、気をつけろよイシェ」と軽やかに答えたが、イシェはテルヘルの言葉に真剣さを覚えた。
遺跡の入り口は、まるで巨大な獣の口のように開いていた。薄暗い内部に足を踏み入れると、冷たく湿った風が肌を刺す。ラーンは剣を抜き、周囲を警戒しながら歩を進めた。イシェは後方を注意深く見回しながら、テルヘルに続く。彼女はいつも以上に緊張していた。豊穣な大地が約束されたこの世界でさえ、遺跡の奥には闇と死しか存在しないことを知っているからだ。
彼らは深い闇の中を進み、やがて広がる石室にたどり着いた。壁一面には古代の人々が描いた精緻な絵画が描かれており、その中心には巨大な祭壇があった。祭壇の上には、金と宝石で飾られた小さな箱が置かれている。ラーンの目が輝き、彼は「 jackpot!ついに大穴だ!」と叫んだ。しかし、イシェは不吉な予感を感じていた。
その時、祭壇の床から鋭い棘が生えてきた。ラーンは咄嗟に避けようとジャンプしたものの、右足に棘が刺さってしまった。血が吹き出す中、彼は苦痛の声を上げた。「ラーン!」イシェは駆け寄ろうとしたが、テルヘルが彼女を抑えた。「待て!あの箱には呪いがかけられている。触れるな」。イシェは驚愕し、ラーンの悲鳴と共に、祭壇から立ち上る黒い霧を見た。
その霧は瞬く間に広がり、遺跡全体を包み込んだ。イシェは恐怖と絶望を感じた。豊穣な大地に生息するあらゆる生物が畏怖する、闇の力。それは、かつてこの世界を滅亡の淵へと導いたものだった。