「おい、イシェ!あの石の奥に何かあるぞ!」ラーンの声がビレーの遺跡の薄暗い通路にこだました。イシェは眉間にしわを寄せながらラーンが指さす石柱を見つめた。確かに、石柱の背後には不自然な影があった。
「待てよ、ラーン。あの影はただの影かもしれないぞ。それに、ここには罠が仕掛けられてい—”
ラーンの足が先に動き出した。「そんなこと言ってても始まらない!大穴が見つかるかも!」彼は石柱に手を当て、力強く押し始めた。イシェはため息をつきながら後を続けた。
「本当に、あの男は…」イシェの呟きはテルヘルにも届いた。彼女はラーンの行動を冷静に見つめていた。「彼には計画性がない。だが、彼の衝動性は時に有用な武器になる」テルヘルはそう考え、ラーンを影から観察し続けていた。
石柱がゆっくりと倒れ始めた時、イシェは不吉な予感を覚えた。石柱の裏側に隠されていたのは、ただの壁ではなかった。そこには、複雑な仕掛けが施された扉があったのだ。
「やれやれ…」イシェはため息をつきながら、扉の解読を試みる。ラーンは興奮気味に扉を押し続けていた。「早く開けろ!何があるか見てみたい!」彼は扉を揺さぶり始めた。その瞬間、壁から鋭い矢が飛び出し、ラーンの腕を貫通した。
「うっ!」ラーンは悲鳴を上げながら倒れ込んだ。イシェは慌ててラーンの傷口を抑え、「早く、テルヘル!何かできることないのか?」と叫んだ。
テルヘルは冷静に状況を判断していた。彼女は近くの壁から小さな瓶を取り出し、ラーンの傷口に注いだ。それは強力な止血薬だった。「落ち着け、イシェ。彼はまだ大丈夫だ」テルヘルはそう言ったが、彼女の瞳には冷ややかな光が宿っていた。
「あの扉を開けるのは危険だ。罠だと確信した」イシェは不安げに言った。「だが、ラーンを助けるためには…」
「いいだろう。私は扉を開けてみる」テルヘルはそう言って、扉の仕掛けを解き始めた。彼女は扉の奥にあるもの、そしてラーンの運命を知っていた。それは、彼らを待ち受けている真実、そして、彼女自身の復讐の鍵だった。