ビレーの朝はいつも早かった。ラーンがイシェを起こす前に、すでに太陽は街の屋根越しに顔を見せていた。「今日はいい日になりそうだな!」 ラーンの元気な声がイシェの薄暗い部屋に響き渡る。
イシェは眠たい目をこすりながら、床から起き上がった。「また大穴の話か? ラーン、現実を見てくれよ」 イシェはため息をつきながら、テーブルに置かれた粗末なパンを手に取った。
「現実? 現実なんて食っていけるもんじゃない!俺たちは遺跡探検者だぞ!」 ラーンの目は輝いていた。「今日はテルヘルが新しい遺跡の場所を教えてくれるって言うんだ。あの遺跡には古代の宝物が眠っているらしいぜ!」
イシェは諦めたように微笑んだ。「そうか、また大穴の話か…」
三人はビレーの外れにある小さな酒場でテルヘルと合流した。彼女はいつも通り、黒いマントを身にまとっていて、鋭い眼光で周囲を見回していた。
「準備はいいか?」 テルヘルは低い声で言った。「今日の遺跡は危険だ。罠や魔物がいるかもしれない。」
ラーンは意気揚々と剣を構えた。「大丈夫だ! 俺たちに任せてくれ!」 イシェはテルヘルに鋭い視線を向け、「警告」の言葉を口にしたが、ラーンには聞こえなかった。
遺跡への入り口は崩れかけで、薄暗い空気が漂っていた。「ここは本当に安全なのか?」 イシェは不安そうに言った。
「安全かどうかは、俺たちが決めるんだ。」 テルヘルは冷たく言い放った。三人は遺跡の中へと足を踏み入れた。
遺跡の奥深くには、巨大な石の扉があった。扉の前には奇妙なシンボルが刻まれており、不気味な光を放っていた。
「これは…?」 イシェは扉に手を触れた瞬間、激しい頭痛が襲ってきた。「警告!」 イシェは叫びながら後ずさった。
しかし、ラーンは既に扉を開けようとしていた。テルヘルはラーンの動きを止めようとしない。イシェの叫びは風に乗って消えていった。