「おい、イシェ、今日はいい感じの場所を見つけたぞ！」ラーンが興奮気味に叫ぶ。目の前には崩れかけた石造りの門が、まるで巨人の口を開けたように闇を覗かせていた。
「またかよ、ラーン。」イシェはため息をつきながら、それでも彼の後を追う。いつも通り、ラーンの計画性のない行動に呆れていた。「あの門の奥には、一体何が眠っているんだろうな…」
ラーンのワクワクした声に、テルヘルは冷ややかな笑みを浮かべた。「期待しすぎると痛い目を見るものよ。」彼女の目は、門の奥深くを見据えていた。
「まあ、大穴を掘り当てれば、この街を出て、もっと広い世界へ羽ばたくことができるんだ！」ラーンの夢はいつも大きく、イシェを呆れさせていたが、テルヘルは彼の言葉を真剣に受け止めた。彼女には、その夢を叶えるための別の計画があったのだ。
遺跡の奥深くへと進むにつれて、空気が重くなっていった。湿り気のある石壁からは、何とも言えない不気味な匂いが漂い、足元には、時が止まったかのように朽ち果てた遺物たちが転がっていた。
「ここらへんで何か見つけたぞ！」ラーンが叫びながら、石の下から小さな箱を拾い上げた。イシェは慎重に箱を開ける。中には、錆び付いたコインと、劣化が進んだ地図が入っていた。
「これは…」イシェは地図を広げると、すぐに驚きの声をあげた。「ヴォルダン領土の奥深くにある遺跡を示している…」
ラーンの顔色が変わった。「ヴォルダンって…あのヴォルダンか？」
テルヘルは、静かに頷いた。「そうだな。この地図は、私が探していたものの一つだ。」彼女の目は鋭く光っていた。
「この遺跡には、ヴォルダンに奪われた私の大切なものが隠されているかもしれない。そして、その報酬は…」彼女は少し間を置いて、「君たちにも十分な謝礼を与えてくれるだろう。」と、静かに言った。