「よし、今回はあの崩れた塔だ」
ラーンがそう言うと、イシェは眉間にしわを寄せた。
「またあの塔？ あそこは既に何時間も探して何も無かっただろう」
「いや、今回は違うって！ 昨日街で聞いたんだ。塔の奥深くにある部屋に、何か隠されているらしいって」
ラーンの目は輝いていた。イシェはため息をついた。ラーンの言う「何か」は、たいてい大したものではない。それでも、ラーンが夢中になるときは、イシェも彼についていくしかないのだ。
三人はビレーの郊外にある崩れた塔へと向かった。塔はかつて壮大なものだったのだろうが、今は風化と崩壊で大部分が崩れ落ち、危険な場所だった。
「ここだ！」
ラーンが塔の一室に駆け込んだ。イシェもテルヘルも後を続いた。部屋の中央には、石造りの祭壇があった。
「ここか…」
テルヘルが祭壇に近づき、表面の埃を払うと、そこに複雑な模様が浮かび上がった。
「これは…？」
イシェは目を丸くした。模様はまるで迷路のような形をしていた。
「もしかして、これが噂の謎解き？」
ラーンが興奮気味に言った。
テルヘルは冷静に祭壇を調べ始めた。「この模様は、塔の歴史を示すものかもしれない。もしかしたら、この迷路を辿れば、隠された部屋へたどり着けるのかも」
三人は協力して模様を解読し始めた。イシェは鋭い観察力で模様の細かな違いを見つけ出し、ラーンは力任せに石板を動かした。テルヘルは知識と経験を駆使し、歴史的な文献や伝説からヒントを得ていった。
ついに、彼らは迷路を解き明かし、祭壇にある特定の位置を押すことで、壁が開く仕掛けを発見した。
「やった！」
ラーンが叫び、壁を開けると、そこに小さな部屋があった。部屋には宝箱が一つ置かれていた。
「ついに大穴か？」
ラーンの期待に胸を膨らませた瞬間、イシェは何かを感じ取った。
「待て…」
イシェは宝箱に近づき、慎重に蓋を開けようとした。その時、宝箱から奇妙な光が放たれ、部屋中に充満した。三人は目を閉じたが、その光は彼らの脳裏に直接情報として刻み込まれたように感じた。
彼らはすぐに理解した。宝箱には、単なる金や宝石が入っていたのではない。それは、この世界の歴史を塗り替えるほどの、巨大な秘密だったのだ。