「よし、今回はあの崩れかけた塔だな」
ラーンの豪快な声は、ビレーの朝霧を切り裂くように響き渡った。イシェはため息をついた。「また遺跡か…本当に大穴が見つかると思うのかね」。ラーンはニヤリと笑う。「いつか必ず!俺にはそんな気がするんだ!」
彼らの前に立ちはだかるのは、苔むした石造りの塔だった。かつて栄華を誇った文明の名残が、崩れかけた壁に残る彫刻や、風化で読み取れない文字に刻まれていた。
「よし、イシェ、お前は警戒を。テルヘル、artifact(遺物)を発見したらすぐに知らせてくれ」ラーンの指示に、イシェはうなずく。テルヘルは鋭い眼差しで塔の内部をくまなく見回し始めた。
塔内は薄暗く、埃っぽい空気が立ち込めていた。足元には石畳が敷かれていたが、ところどころ崩れ落ちており、慎重に進む必要があった。
「何か感じる…」。テルヘルが呟いた。彼女は石畳の下に埋もれた、小さな金属の箱を発見した。「これは…」
箱を開けると、中には複雑な模様が刻まれた金色のプレートが入っていた。イシェは眉をひそめた。「何だろう?」ラーンは興奮気味に近づき、「これは大穴へのヒントになるかもしれない!」と叫んだ。
「待て」テルヘルは静かに言った。「この模様…どこかで見たことがあるような…」彼女は目を閉じ、深く考え込んだ。「あの書物に…!」
テルヘルの記憶が鮮やかに蘇ってきた。ヴォルダン王室の図書館に保管されていた、古代文明に関する禁断の書物。そこには、このプレートと似た模様が記されており、ある場所を示す地図として描かれていたという。
「これは…」テルヘルは息を呑んだ。「これはヴォルダン王室が隠している秘密…そして、俺たちの復讐に繋がる鍵になるかもしれない」。彼女は目を輝かせた。「このプレートが指し示す場所へ行く必要がある。そして、真実に辿り着くために…」