ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑う。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の背中に手を叩きつけている。「また遺跡で何か見つけたのか？」
「いや、そうじゃないんだ！」ラーンは目を輝かせ、「今日はテルヘルから大仕事が入ったんだ！あのヴォルダンとの国境の近くにある遺跡で、supposedly、とんでもない遺物が見つかったらしいんだって！」
イシェはため息をついた。「また危険な話？」
「でも報酬は倍だぞ！これで新しい装備を買えるぞ！」ラーンは興奮気味に言った。イシェは彼の熱意を冷ますように、「テルヘルが言うには、あの遺跡はヴォルダンからの監視下にあり、入るのはかなり難しいらしいよ。」と冷静に言った。
テルヘルはテーブルの端に座り、鋭い目で二人を見つめていた。「危険な場所だというのは事実だ。だが、そのリスクに見合うだけの価値がある。あの遺物があれば、ヴォルダンに復讐を果たすための資金を手に入れることができる。」彼女の言葉は冷酷で、まるで氷のように硬かった。
ラーンは全く意に介さず、「よし！じゃあ明朝出発だ！」と立ち上がった。イシェは諦めたようにため息をつき、テルヘルの冷たい視線を感じながら、「準備は整っている」とだけ言った。
翌朝、彼らはビレーを出発した。ヴォルダンとの国境へと続く険しい山道を歩き、やがて遺跡の入り口にたどり着いた。そこはかつての戦場であり、今も残骸と死の影が漂っていた。
テルヘルは遺物のある場所を示し、「あの奥だ」と指示した。ラーンとイシェは慎重に遺跡の中を進んでいく。遺跡内部は暗く、湿った空気で充満していた。壁には奇妙な文字が刻まれており、不気味な雰囲気を漂わせていた。
「ここには何かいる気がする…」イシェは小さく呟いた。ラーンの顔色も少し曇っていた。「気をつけろ」と彼は剣を握りしめ、進む。
やがて彼らは遺物がある部屋にたどり着いた。中央には黄金の箱が置かれており、その周りに兵士たちの亡骸が散らばっていた。イシェは目を丸くした。「これは…一体…」
その時、後ろから誰かが襲いかかってきた。ラーンは反射的に剣を振り回し、襲ってきた男を倒した。だが、その男はすでに息絶えていた。彼の顔は青ざめており、目には恐怖が宿っていた。
「何だこれは…？」イシェは恐る恐る近づき、男のポケットから小さな瓶を取り出した。瓶の中には赤い液体が満たされており、強烈な腐った臭いが漂っていた。
その時、テルヘルが冷たく言った。「これは毒だ。ヴォルダンからの刺客だ。」
ラーンの顔色が青ざめた。「なぜ…？」
テルヘルは冷たい目をして言った。「ヴォルダンはあの遺物を手に入れようとしている。そして、邪魔をするものはすべて排除するつもりだ。」
イシェは恐怖で震えながら、「でも、どうして…」と呟いた。
テルヘルはゆっくりと剣を抜き、ラーンの肩に手を置いた。「私はヴォルダンに復讐を果たすためにここに来た。そして、お前たちを利用した。」
ラーンはショックのあまり言葉を失った。イシェは絶望的な表情でテルヘルを見つめた。
「お前たちは犠牲だ」テルヘルは冷酷に言った。「だが、私の復讐のために必要な犠牲だ。」
彼女は剣を振り上げた。その瞬間、ラーンの目の奥に燃えるような光が宿った。彼は怒りと悲しみをこめて叫んだ。「イシェ、逃げろ！」