「おい、イシェ、あの石碑みてえの、どうだ？」ラーンが指差す方向には、崩れかけた壁に奇妙な模様が刻まれた石碑が立っていた。「またかよ、ラーン。そんなもん遺跡探しの本質じゃないって何回言った」イシェはため息をつきながら、石碑の周りを見渡した。雑草が生い茂り、朽ち果てた柱が倒れ伏している。かつて栄華を極めた文明の名残に過ぎない、忘れられた遺跡だった。「でもさ、もしかしたら何か書いてあるんじゃないのか？俺たち、大穴掘れるかもよ！」ラーンの目は輝いていた。イシェは彼の熱意に少しだけ心を動かされた。「わかったわかった、ちょっと見てみるか」
すると背後から、冷たい声が響いた。「石碑の調査は、私にお任せください」テルヘルが鋭い視線で石碑を睨みつけている。「この記号は、ヴォルダン軍が使用する暗号の一種に似ている。恐らく、かつてこの遺跡を占拠した際に残されたものだ」テルヘルは静かに石碑に手を触れ、指先から淡い光が流れ出す。「この記号の組み合わせ…なるほど、これは単なる警告ではない。ヴォルダンの軍備配置を示しているようだ」
ラーンは眉間に皺を寄せた。「ヴォルダンか…。まさか、またあの国境付近で何か企んでいるのか？」イシェも不安げにテルヘルを見る。「何をしているんだ？なぜこんなところに…」テルヘルは視線をラーンとイシェに向け、「私はこの情報を利用し、ヴォルダンに復讐を果たす」と宣言した。彼女の瞳には冷酷な光が宿っていた。「そして、あなたたちにも役割がある。遺跡探しの技術を使って、ヴォルダンの秘密兵器の場所を探し出すのだ」ラーンの表情は曇り、イシェは言葉を失った。彼らは、ただの遺跡探索から、国家間の陰謀に巻き込まれていくことになった。