「待てラーン！あの崩れかかった石柱の下には絶対何かあるって！」イシェの叫びは、ラーンの興奮を冷ますには至らなかった。「そんなのただのゴミだ。早く宝探しの場所に戻ろうぜ！」ラーンの足取りは軽快に遺跡内部へと進み、イシェの言葉は空虚なエコーとなって消えていった。
テルヘルは深くため息をついた。「あの男、本当に困ったものだ」彼女の視線は崩れかけた石柱に注がれた。確かに危険な場所だった。ラーンの無謀さは時に彼女を不安にさせるが、同時に彼の純粋な探求心にも惹かれるものがあった。
「何か見つけた？」ラーンの声が響き渡った。「おいイシェ、見てみろよ！これは一体なんなんだ！」イシェはため息をつきながら石柱の影から姿を現した。そこに置かれたのは、一見ただの石板にしか見えなかったが、その表面には複雑な模様が刻まれていた。
「これは...」テルヘルは眉間にしわを寄せた。「古代語だ。しかも...ヴォルダンと関連があるものらしい」ラーンの興奮は一層増した。「やったぜ！これで大穴が見つかるぞ！」イシェは静かに石板の模様を観察し、不安げに言った。「ラーン、これは危険な予感がするよ。この遺跡には何か恐ろしいものが眠っているんじゃないか？」
だがラーンの耳には届かなかった。彼は興奮のあまり、すでに石板を手に取ろうとしていた。テルヘルは一瞬ためらったが、ラーンの行動を諫めることはできなかった。彼女の過去はヴォルダンに奪われたものであり、この遺跡から何かを得ることは、復讐を果たすための重要な手がかりとなるかもしれない。
「よし、これで準備万端だ！」ラーンは石板を持ち上げると、その瞬間、遺跡の奥から不気味な音が響き渡った。イシェは恐怖に顔を蒼白にし、テルヘルは剣を握りしめた。
「行くぞ！宝が待っている！」ラーンの言葉は、今や希望ではなく、運命への挑戦の宣戦布告のように聞こえた。