「よし、今日はあの洞窟だな」ラーンが、ボロボロの地図を広げながら言った。イシェは眉間に皺を寄せた。「またあの危険な場所？ ラーン、あの洞窟は地元の人々ですら近づかないって言うんだぞ。何かあったら責任取れるのか？」
ラーンの笑顔が歪んだ。「大丈夫だって！ほら、テルヘルさんが言ってただろ？あの洞窟には貴重な遺物があるって！」
テルヘルは鋭い視線でラーンを見つめた。「確かにそうだが、危険を冒す価値があるかどうかは別だ。特に今回は時間がない。ヴォルダンとの交渉が始まるまでに、強力な武器が必要なんだ」
イシェはテルヘルの言葉に少し安心した。彼女はいつも冷静沈着で、目的のためなら手段を選ばないタイプだが、同時にラーンの無謀さをきちんと抑えてくれる存在でもあった。
「よし、わかったよ！イシェ、準備はいいか？」ラーンが剣を手に取り、目を輝かせた。「大穴が見つかるかもな！」
イシェはため息をつきながら、準備を整えた。いつも通り、ラーンの無謀さに巻き込まれることになるだろう。だが、彼の熱意と、テルヘルの目的達成への強い意志に、彼女はどこか心を動かされていた。
洞窟の入り口に近づくと、不気味な冷気が漂ってきた。イシェは背筋が凍りつくのを感じた。「ここは本当に大丈夫なのか…」と呟く。ラーンの顔色も少し曇っていた。
「いいだろう、気合を入れ直そう」とラーンは言い、洞窟に足を踏み入れた。イシェは深く息を吸い、テルヘルに視線を向けた。彼女は冷静に頷き、三人は闇へと消えていった。