ラーンの豪快な笑い声がビレーの狭い路地裏にこだました。イシェは眉間にしわを寄せながら、彼の手がけずり出した古い地図を睨んでいた。
「本当にここなのか？ この地図、何十年も前に誰かが落とした遺物らしいぞ。信憑性あるのか？」
ラーンの肩越しに見るイシェの視線の先には、地図に記された遺跡の場所を示す赤い丸があった。それはビレーから南へ数日の行程、ヴォルダンとの国境に近い険しい山岳地帯にあった。
「大丈夫だ、イシェ。ほら、テルヘルが言ってただろ？ この遺跡はヴォルダンの軍がかつて略奪した遺物があるらしいって。」ラーンの言葉に、イシェはさらに眉をひそめた。テルヘルはヴォルダンとの復讐に燃える謎の女性であり、その目的達成のためなら手段を選ばない冷酷な人物だった。
「だが、なぜそんな危険な場所に遺跡があると？」イシェが尋ねると、ラーンはにやりと笑った。
「だって、危険こそが財宝を見つける鍵だからだ！ それに、テルヘルが言うには、あの遺跡にはヴォルダンが恐れる何かがあるらしいぞ。もしそれが本当なら…」
ラーンの目は輝きを放ち、イシェの心にもわずかな期待が芽生えた。しかし、すぐに現実的な思考がそれを抑え込んだ。危険な場所での探索は、彼らの命を賭ける行為だった。そして、テルヘルは彼らを何のために利用しているのか？ 謎は深まるばかりだった。
イシェは地図に記された赤い丸を見つめ直した。そこに眠るものは財宝なのか、それとも何か別のものなのか。そして、彼らはそこで何を見つけることになるのか？ イシェの頭の中を、様々な可能性が渦巻いた。だが、一つだけ確かなこと。それは、この冒険が彼らの運命を変える、大きな転換点になるということだった。