「おい、イシェ、あの石碑、どうだ?何か刻まれてるぞ!」ラーンの太い指が石碑の表面をなぞった。イシェは眉間に皺を寄せながら近づき、石碑の文字列を慎重に読み解こうとした。「これは...古代ヴォルダン語だ。意味は...」
「おい、何だって言ってるんだ?」ラーンが不耐気に声を上げた。「早く言えよ、何か財宝のヒントとか書いてないか?」イシェはため息をついた。「まだよくわからない。複雑な呪文のようなものと...」彼女は言葉を詰まらせ、ラーンの顔色を伺った。「もしかしたら...これはヴォルダンとの関係を示唆する内容かもしれない」
ラーンの顔色が曇り始めた。「ヴォルダン?またかよ。俺たちは財宝を探しに来たんだぞ、政治的な話には興味ない」イシェは冷静に反論した。「でも、この遺跡がヴォルダンと何か関わりがある可能性を無視できるわけじゃない。もしかしたら、ここに眠る遺物は...」
「いい加減にしてくれよ、イシェ!」ラーンの怒りが爆発しそうだった。「俺はもう疲れた!そんな難しい話よりも、早く大穴を掘りたいんだ!」彼は剣を抜き、石碑を叩きつけた。「これで終わりだ!」
イシェはラーンの行動に呆れ返った。彼には理解できない、この遺跡がもたらす可能性、そしてヴォルダンとのつながりを深く掘り下げる必要があることを。彼女はテルヘルに報告すべきかもしれない...そう思った時、遠くで何者かの足音が聞こえてきた。
「誰か来たぞ!」ラーンは剣を構えた。「準備しろ、イシェ!」イシェはラーンの顔を見つめた。彼の目は、恐怖よりも怒りで燃えていた。
彼女は深く息を吸い、自分の判断を信じた。「いいわよ、ラーン。でも...今回は私が先導する」